• 福山ぶらり歴史紀行

旧マルヤマ商店事務所

広島県福山市松永町

下駄の町 松永のパイオニア 丸山茂助とマルヤマ下駄

嘉永六年(1853)に松永に生まれた丸山茂助は明治11年(1878)に履物商を創業。明治二五年頃、松永の塩を山陰に運んだ帰りバラストとして積まれた安価なアブラギを下駄の材料にすることを着想。桐を材料とする高価な下駄とは異なり、安くて丈夫な丸山の下駄は大ヒットとなった。様々な工夫で大量生産化が図られ、やがて松永は日本の下駄の六割を生産する下駄の大産地に発展していくこととなる。
大正11年(1922)には二代目丸山茂助が、社屋として瀟洒な洋館を建てた。非常にデザイン性に優れた建物で、下駄の町松永のシンボルとしてふさわしい威厳を示したことだろう。築一〇〇年ほど経った今でも美しさを保っており、長きにわたり大切に手入れされてきた証しである。
三代目の丸山雷蔵は下駄需要の縮小や塩田の廃止など時代の厳しい流れの中を泳ぎきり四代目の丸山茂樹にバトンを渡す。奇しくも松永市と福山市の合併の年であった。茂樹は社名をマルヤマとし、創業百年記念として「日本はきもの博物館」、平成六年には「日本郷土玩具博物館」を設立した。時代と共に輝きを放ち松永を形づくってきた塩田と下駄の歴史は、決して失ってはいけない松永の記憶であり誉れである。

旧マルヤマ商店事務所(国登録有形文化財)。
外壁は石造のように見えるが実際は木造。左官仕上げで石のようにみせており、細かい装飾が各所に見られる。頂部には装飾のあるコーニスとパラペットが付き、2階の窓はアーチ、玄関ポーチの上にはベランダ、など本格的洋風建築のデザインが見られ、堂々たる姿である。

1階の応接スペース。床の間を備えた和洋折衷のユニークなデザインになっている。

2010年のコーヒーハウスだった当時の様子。現在は毎週土曜日の午後1時~3時まで喫茶店・まつぽっくりが開店している。

PAGE TOP