• 福山ぶらり歴史紀行

千田大峠

福山市千田町

神辺街道の名残りを留める霊域

江戸時代、福山と神辺を結んだ神辺街道。その途中にあるのが千田大峠である。奈良津町の五反田地蔵堂を過ぎてからしばらく旧道を行くが、やがて二車線に拡幅された道路に出る。かつての風情は全く残っていない。しかし、その長く急な坂に往時の苦労が偲ばれる。

大峠はちょうど奈良津村と千田村の境にあった。村の入口から悪い霊や疫病が入ってこないように、古くは村境に道祖神や地蔵尊が祀られるが常であったが、この峠に祀られた石造物はかなり立派で、峠の険しさを物語っているかのようである。

ここから下り坂になり、下りきったところにある丸池の縁をぐるりと回っていくのだが、その土手沿いに一里木があった(現在は跡が残る)。神辺街道はここで道半ば。この池のほとりでも休む人がいたかもしれない。

江戸の初めから使われていた神辺街道は天明五年(一七八五)に神辺・千田の人が相談し、井原・高屋からも寄付金を集め道を広くしたという。神辺街道は神辺方面から福山城下へと向かう人々にとって重要な道であったということだ。両備軽便鉄道が開通すると、この道は次第に使われなくなっていく。現在、神辺街道は国道313号によって分断され、年々街道の面影はなくなっている。これからは、千田大峠の石造物たちが神辺街道の名残りを背負っていくことになるのだろう。

千田大峠にある石造物。左から宝篋印塔(高さ3.8m)、力士の墓(天保4年、朝香山清九郎)、法界地蔵(安永3年)、三界萬霊地蔵。村の豊かさを誇るように立派なものである。

国道313号「南陽台入口」付近のガード下。かつての両備軽便鉄道の橋脚が今も残っている。五反田地蔵堂からこのガード下をくぐり、大峠へと向かう。

ガード下から続く道。

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