広島県福山市鞆町・新市町

茅の輪くぐり(福山市鞆町・沼名前神社)(福山市新市町・素盞嗚鳴神社)

健やかな日々への祈りは時代を経ても変わることはない。

六月三十日、夏越の祓として全国各地の神社で茅の輪くぐりが行なわれるが、「茅の輪くぐり(蘇民将来)」伝承の発祥は、ここ備後なのである。
武塔神(スサノオノミコト)が旅の途中、備後の地で宿を求めた。裕福な弟巨旦将来はそれを拒み、貧しい兄蘇民将来は一夜の宿を提供した。後に再びそこを通った武塔神は蘇民将来とその娘らの腰に茅の輪をつけさせ、 弟たちは宿を貸さなかったという理由で皆殺しにしてしまった。 武塔神は今後疫病が流行る時は、 蘇民将来の子孫と云い茅の輪を腰に着けると、疫病か免れられると言って立ち去った。
須佐之男命を祭神とする祇園社は備後には百数十を超えるが、三祇園として有名なのが、戸手の天王社(素盞嗚神社)、鞆の祇園宮(沼名前神社)、甲奴郡小童の須佐神社である。
健やかな毎日を過ごしたい、その思いと行動が健やかな明日を拓いてくれる。それは何百年も変わらぬ人々の祈りである。

前日におこなわれる茅の輪作り。鞆町沼名前神社にて

新市町戸手素盞嗚神社の茅の輪くぐりは旧暦六月三〇日頃(毎年新暦八月八日)の夜におこなわれる。

大祓が終ると茅の輪はその場で崩され、茅が参加者に配られる。
それぞれ持ち帰った茅で小さな茅の輪を作り玄関先に飾り、一年の無病息災を願う。

文と写真 秋山 由実