広島県福山市草戸町

明王院

花を愛しむように歴史という歳月を愛しむ場所。

福山が誇る国宝明王院、本堂と五重塔は鎌倉~南北朝時代にかけての建立である。しかし、そこにあるのは、古さではなく、力強さであり、美しさであり、清らかさだ。五重塔は、当時門前町であった草戸千軒に集う人々の寄進によって建立された。人々の思いは七〇〇年の歳月を超えて、今日に受け継がれてきた。
明王院の境内をそぞろ歩き、サツキやアジサイを愛でながら、次代に遺していくことの意義を考えてみたい。強い思いが託されたものは、年経るごとに新たな輝きを放ってくるに違いなのだから。

国宝明王院五重塔。貞和4年(1348)、一文勧進によって建立された。
心柱が一層の天井で止っている全国的に珍しい例。
中世密教寺院における現存唯一の遺例でもある。

国王明王院本堂。元応3年(1321)の建立。
この他、境内には正保4年(1647)水野勝成寄進の「鐘楼」、
寛永16年(1639)建立の「護摩堂」他、山門・庫裡・書院など市・県の重文多数あり。

毎年旧暦1月23日に行われる火渡り神事。

護摩堂から望む五重塔。護摩堂や書院などが一般公開される日がある。

文と写真 秋山 由実