• 福山ぶらり歴史紀行

医王寺

広島県福山市鞆町

視界いっぱいの春を満喫古刹から望む鞆ノ津

江戸時代の町並を今に残す鞆は、ぶらりと散策するだけで歴史を体感できる町である。しかし、きつい坂に息切らせ、それでも訪れてみたいのが医王寺だ。
桃林山慈眼院医王寺は、鞆で二番目に古く、平安時代(八二六年)、弘法大師の開基と伝えられる。本堂は貞享二年(一六八五)水野勝種再建といわれ、本尊の木造薬師如来立像は室町時代中期の作とされる。決して威容を誇る寺ではないが、いぶし銀のような佇まいは、どこか懐かしく人の心をほどいてくれる。
視界に広がるのは、満開の桜、黄色に萌える菜の花、その向こうに小船の浮ぶ瀬戸の海。鐘楼の下に佇んで、鞆の浦を望めば、春の気配が全身に降り注ぐ。
江戸時代、参詣に来た人々は同じように鞆の町並を見おろしたことだろう。鞆の町並こそが歴史であり、文化財そのものなのかもしれない

水野勝成公寄進の鐘楼。鞆の漁師仁右衛門が苦労して鋼を集め鋳造した。
これを聞き及んだ勝成が鐘楼を寄進。寛永20年(1643)正月に完成したという。
(梵鐘は戦時中供出された)

山高帽子を被ったような石灯籠。他所では見かけない形だが、不思議と風景ととけあっている。

医王寺からさらに上へ。「奥の院」からの鞆の浦の眺望。ここまで来る人は少ない。

文と写真 秋山 由実

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