広島県福山市熊野町

高下八幡神社の狛犬

石工の心意気が映える古き神社の守護獣

神社の参道に鎮座する参道狛犬の歴史はそう古くはない。江戸中期頃から一般化したもので、文化財的には省みられることは少ないが、ファンが多いのも事実であろう。どの神社にもあるものだが、それぞれに趣が異なる。石工が腕を競った造形美を見るのも一興、寄進者は誰で建立年は…、様々な情報がつまっていて、近世史を多角的に楽しむには手頃な歴史遺産だ。
福山市内の石造狛犬で、現在一番古い銘が入っていると思われるのが、熊野町高下の八幡神社の狛犬だ。この時代、尾道石工の狛犬を寄進したこの地域の氏子衆の経済的・文化的なレベルの高さはどれほどのものだったろう。歴史の奥深さを実感する一瞬でもある。

台座に「正徳元年卯八月吉日」(1711)と「尾道石工喜右エ門」の文字。
少なくとも、この部分はこの時代のものである。

石段下の燈籠は、尾道石工和助作。
棹部に、「慶長十二丁未八月(1607)」と刻んである。福山が未だない時代だ。

谷あいの集落のはずれにある神社。
ひしひしと厳かな神域であることを感じる。

文と写真 秋山 由実