• 福山ぶらり歴史紀行

宮の前廃寺跡とはねおどり

広島県福山市蔵王町

律令時代の伽藍跡に響く「チャランコッコ」の音色に心も躍る。

白鳳期から天平時代に大伽藍を構えた「海蔵寺」。その門前市として栄えたのが市村だ。備後国の国府の外港だった深津湾岸を臨んだ高台には多くの人々の声がさんざめいたことだろう。しかし、「海蔵寺」は平安時代の頃に火災のため焼失したという。
奈良時代の門前市は、市村となり何百年もの時を経る。そして昭和の半ば「蔵王町」という名前に変わった。
現在、宮の前廃寺跡の遺跡の真中には蔵王八幡神社の参道が通り、頂上には社殿が建っている。そして、毎年十月、境内に「チャランコッコ」の音色が響き、市場の活気と喧騒さながらに、賑やかにはねおどりが奉納される。
福山市内の他のはねおどりとは異なる優美さと快活さをもつ蔵王はねおどり。発祥は詳らかではないが、古代から引継いだ賑わいの歴史を内包するかのように、今年も秋の天空に鉦の音と人々の声が高らかに響きわたる。

八幡神社参道脇の「宮の前廃寺跡」遺跡。国史跡。金堂は白鳳期(645~710)に、塔は天平時代(710~784)に建立された。東に塔を配し、西に金堂を配する法起寺式と呼ばれる伽藍の寺院。塔跡から出土した瓦に「紀臣和古女」「栗栖君」などの人名を刻した文字瓦がある。

八幡神社の表参道。両側に「宮の前廃寺跡」史跡がある。

10月に奉納される「蔵王はねおどり」(県無形民俗文化財)。

「沼隈はねおどり」「田尻はねおどり」と異なる音律と所作を持ち、また神社当番組制という特異な成り立ちを持つ。

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