• 福山ぶらり歴史紀行

平家谷

広島県福山市沼隈町

清浄なる梵鐘の音が新たな年へと導く

春浅き頃、平家谷を訪れる。燃えるような赤色に、心がざわめく。咲き誇る椿の花も、神社の紙垂も、案内板も、すべて赤色。他の里の風景とは全く異なる空間。通盛主従が谷へわけいった道はどこだろう。食事をしたという大岩、山越えしてきた仲間と出会い気勢をあげた場所…。
源平合戦に敗れ、再起を夢見てひそかに暮らしていた平家ゆかりの人々の息遣いが聞こえてきそうな里の風景。ここに現代人が置き忘れてきた「無常」の美意識を垣間見る。

2月~3月、里の椿も花盛り。赤色のじゅうたんが目に鮮やか。通盛神社そばの「平家谷つばき園」も開園する。(3/10~、大人500円小人200円)

白い鳥獣は生息しない。白い夕顔や綿も育たない。下着や襦袢、手ぬぐいも白は禁じられていた平家の谷。現在の平家谷は、案内板も標柱も赤色。まるで里のあちこちに平家の赤旗が掲げられているよう。その色に導かれるように平家谷の隅々を訪ね歩くと、平家ゆかりの里の輪郭が見えてくる。

平通盛の菩提寺・福泉坊のしだれ桜は桜スポットとしても有名。

文と写真 秋山 由実

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