• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第15回

三好教育長に聞く 福山100NEN教育

臨時休業での子どもたち

福山市では、学校でのコロナウイルス感染リスクの回避、児童生徒・保護者の不安の解消を図る観点から、5月6日までとしていた臨時休業を5月31日まで延長しています。

 5月号に続き、休業期間中の子どもたちや学校の状況について、三好教育長からお話を伺います。

—臨時休業の間、学校では、子どもたちの学習支援をどのように行っていたのですか。

教育長:子どもたちの学習は、家庭学習を基本とし、子どもと保護者の選択による自由登校で行ってきました。5月7日からの臨時休業の延長を受け、各学校は自由登校の中で、家庭学習の課題を渡したり、提出したりする日を設定しました。登校しない子どもたちには、家庭訪問や電話、ホームページなどを通して、伝えられるようにしていきました。

 その他にも、教職員が示す課題だけでなく、子どもたちが自分で選ぶことができる課題を準備したり、メール配信システムを使い、子どもたちへの「挑戦状」として、教職員がリレー方式で問題を送ったりするなど、子どもたち自ら「やってみよう」と思える家庭学習を工夫している学校もありました。

 また、家庭学習のやりとりをするためのポストの設置、いつ、どの教科の教職員が学校にいるかを連絡し、質問したい内容に応じて登校する日や時間を選べるようにするなど、各校で教職員がアイディアを出し合いながら、子どもたちの学習を支援していきました。

—子どもたちの学びを繋ぐために、各校でさまざまな取組がされていたのですね。教育委員会としては、どのような取組を行ったのですか。

教育長:家庭にあるパソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末を利用し、学校からのメッセージや課題を受け取ったり応えたりできる学習用クラウドサービスを活用できるように整備しました。保護者の皆様には、子どもたちのアカウントを基に、御家庭で設定をしていただき、ありがとうございました。児童生徒が、パソコン等を使用することができない場合には、学校に御相談ください。

 また、計画的な学習とともに、子どもたちが自分でやりたいことを見つけ、時間をかけて追究する学習のきっかけになればと思い、私から、子どもたちへの「チャレンジ問題」をホームページに掲載し、学校から各家庭に配付してもらいました。

—「チャレンジ問題」ですか?どんな問題を出されたのでしょうか。

教育長:【チャレンジ1】は、「机について学習するもの」や、「身の回りにあるものを使ったり、自分で作ったりするもの」です。例えば、普段から不思議に思っていることを自分で調べて報告書にまとめたり、生活で使ったり遊んだりできるものを作ったりします。

 【チャレンジ2】は、「自分の好きなこと・考え付いたこと」です。機械に興味がある人は設計図をかいて何かを製作したり、音楽が好きな人は作詞や作曲をしてみたり、自分が興味のあることをとことんまで追究するものです。

 そして、チャレンジしたことを、 自由登校日などで、担任の先生に渡して、教育委員会に届けてもらうようにしました。チャレンジしてくれた人には、学校が始まったときに、「学校元気大賞〜あなたの挑戦が素晴らしい☆〜」を届けに行きます。

—楽しいですね。子どもたちのチャレンジは、教育委員会に届きましたか?

教育長:はい。届きはじめています。

 チャレンジ問題の中で、私が、いくつか問いを出しています。ある小学校6年生が、「いろいろな乗り物を使って月まで行くとしたら、どのくらい時間がかかるのだろう」という問いについて考えていました。そのノートを見てください。

 私は、「いろいろな乗り物」と書いていましたが、この子は、「ロケット」「飛行機」「リニアモーターカー」「新幹線」「電車」「自動車」「自転車」「徒歩」「光」と様々な乗り物(乗り物以外も)の時速を調べ、時間を求めています。5年生の算数「速さ」の学習を思い出しながら、計算したのでしょう。

 それぞれの乗り物の時間を求めていく中で、ロケットの「約9時間30分」はどのくらいの時間かわかるけれど、新幹線の「1281時間」はどのくらの時間かわからない。そこで、「53日」と日数に直しています。さらに、徒歩になると「4004日」。これでは、どのくらいの日数なのかわからない。そこで、「11年」と年数に直しています。

 「知りたい・やりたい」から始まる学びとは、こういうことだと思います。この子は、最後に「光」についても調べています。これだけ調べたからこそ、光では「1・3秒」で月まで行くのだとわかったときは、光の速さにきっと驚いたことと思います。さらに、この学びの面白さに気付き、ふりかえりには「今度は太陽までどのくらいでいけるかを調べてみたいです」と書いています。

 問いをきっかけに「言われてみれば不思議だな」「調べてみたいな」と思って調べ始めていく中で、いろんな言葉や知識が自分の経験や知っていることと繋がり、興味がさらに広がっていきます。このような子どもの「やりたいこと」「知りたいこと」から始まる「子ども主体の学び」を学校でも、家庭でも展開していきたいと思っています。

 教育委員会に届いた「チャレンジ」を紹介します。(5月20日現在)

【チャレンジ1】

*「花」をイメージし、192枚の折り紙を使って作った色を変えて遊べる作品(5年生)〈写真1〉

*「あさがおをそだてたいです。いろみずをやりたいからです。」「6ねんせいのおねえさんといっしょにあそびたいです。やさしそうだからです。」など、小学校でやってみたいことを書いたノート(1年生)
*広告に載っている食品の写真を切りぬき、ノートに貼って、食品の言葉集めをしたノート(1年生)〈写真2〉*「あいうえお」を使った言葉集めや、漢字をお母さんから教えてもらって書いたノート(1年生)
*俳句作り(1年生) 「さくらちる いちねんせいは げんきだよ」
*紙コップとアルミホイルを使って作ったキャッチボールゲーム(1年生)
*動物園へ行ったときの思い出をもとに作った動物すごろく(2年生)〈写真3〉
*自分で撮った動物の写真で作ったすごろく(6年生)

〈写真1〉

〈写真2〉

〈写真3〉

【チャレンジ2】

*家族で公園を散歩しているときに自分で撮ったバラの写真集(2年生)
*『はらぺこあおむし』の英語絵本の英文を書き写し、絵を描いた紙芝居(2年生)
*『Surprise for a Princess』の英語絵本の英文を書き写し、 絵を描いた紙芝居(4年生)
*コロナウイルスの感染状況を調べたことや、ボランティアに挑戦し、病院の防護服を作ったことをまとめたノート(4年生)〈写真4〉
*遠足や運動会が中止になる中、友だちとの思い出を増やすための「月1運動会+まく山学区スタンプラリー」という新しい行事の企画書(4年生)
*みんなが教室にそろったときに読んでもらおうと考えて作った学級新聞(4年生)
*コロナウイルスに負けない体を作るために、調べたことをまとめたコロナウイルス対策ブック(5年生)
*ギターの練習をして、「夜空ノムコウ」「ひまわりの約束」を弾いている写真と動画(5年生)

〈写真4〉

 この他にも、教育委員会のホームページに掲載している学習プリントを、自分で選んで挑戦した一年生もいます。

 「なぜだろう?」という疑問や「やってみよう!」という挑戦は、学びの出発点です。この休業中の家庭での学びは、再開後の学校の学びに必ず繋がります。

 私に届けてくれた、みなさんのチャレンジは、ホームページにも掲載していますので、ぜひ、ご覧ください。

—終わりに、子どもたちに向けて、教育長からのメッセージをお願いします。

教育長:みなさん、長いお休みの間、新型コロナウイルスという見えない敵、そして、いつ学校が始まるかわからない状況に不安を感じていたと思います。家庭にいる時間の中で、「友だちと一緒に勉強したいな」「体をいっぱい動かしたいな」と思っていた人が、たくさんいると思います。

 ホームページに載せた、「不安や心配があるとき、私でもよければ、直接連絡してください」というメッセージを見て、家庭学習の悩みについて、メールをくれた人もいます。

 自分で立てた計画通り学習できた人もいれば、なかなか思うように進まなかった人もいると思います。自由に外に出られない、やりたいことができない、そういうことを我慢しながら、自分で考えたり工夫したりして頑張ったことは、学校が始まった時の大きな力になります。

 学校では、先生たちが、みなさんが家庭でがんばってきたことをこれからの授業につなげていけるよう、いろんなことを考え、準備しています。

 学校が始まっても、毎日の検温、マスクの着用や、机と机の距離をとるなど、感染防止のための取組を行い、みなさんの安全と学校での学びを守るため、全力で取り組みます。一緒に頑張りましょうね。みなさんと、学校で会えるのを、楽しみにしています。

 保護者の皆様、学校再開後も、感染対策、家庭学習等、引き続き御理解・御協力をよろしくお願いします。

びんまる2020年6月号より

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