• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第39回

三好教育長に聞く 福山100NEN教育

テーマ 学習端末の善き使い手をめざして

—子どもたちと教職員へ一人一台の学習端末が配付され、一年が経ちました。ずいぶん慣れてきたのではないですか。

教育長:子どもたちは、いつの間に覚えたのかというくらい様々な機能を使いこなせるようになっています。端末上での意見共有やプレゼンテーションなど、授業での活用の場がどんどん広がっています。初任者研修で初任の先生に「学校に行ってびっくりしたこと」を聞くと、一番多かった声が端末利用についてでした。「学級閉鎖でオンライン授業をしている」「自分より子どもの方が端末を使いこなしている」「覚えが早く、自分でゲームを作っている」など、子どもたちの活用状況に驚いたようです。
子どもは、遊びのプロです。遊び感覚で使っているうちに技をどんどん発見して、自分のものにしているのだと思います。

—きっと保護者の方も、子どもたちの使いこなすスピードに驚かれていると思います。同時に、心配の声も出てきているのではないですか。

教育長:そうですね。活用が進む一方でトラブルが発生することもあり、学校や保護者の方から健康面やルールについて相談を受けることもあります。例えば、「ブルーライトの影響で、視力が低下するのではないか」「端末ですぐに調べられるので、本や辞書を使って調べることからどんどん離れている気がする」など、健康面や学力面での影響を心配される声があります。また、「端末上でのやりとりで友だちを傷つけたり、傷つけられたりすることはないか」「授業に関係のない機能を使って遊んでいないか」など、使い方を心配される声もあります。
こうしたことを踏まえ、本市では、昨年11月に、端末配付の影響や対策を調べるアンケートを実施しました。その結果をもとに、「一人一台学習端末の善き使い手をめざして~課題への対応&活用の約束~」という冊子を作成し、今年度3月に全校へ配付しています。(福山市教育委員会HPで、ご覧になれます)

—この冊子には、どのようなことが書かれているのですか。

教育長:この冊子は、「健康面での影響と対策等」「学力面での影響と対策等」「使い方の課題と対策等」「学習端末を使う時の約束(例)」という4つの項目で構成しています。子どもたちが、安心・安全に学習端末を使用し、学習意欲も含めた「学力」を向上させるために、全校で共有・確認することを整理しました。
各学校が実際に感じている具体的な影響と対応策を載せていますので、いくつか紹介します。


【健康面】(影響・・・△ 対応策・・・〇)

△  視力の低下

△  夜遅くまで使用することによる睡眠不足

△  外遊びの減少による体力低下

〇  連続して使用している時は、遠くを眺めたり、目を休めたりする時間を設定している。

〇  中学校区で「ノーメディアデイ」の取組を行っている。

〇  外遊びの日を決めている。

 

【学力面】

△  書く機会が減少し、書く力、まとめる力が低下している。

△  すぐに端末で検索し、辞書のよさを感じにくくなっている。

△  AIドリルを活用すると、つまずきが把握しにくい。

〇  漢字や作文は手書きにしている。

〇  インターネット以外での調べ方を示し、学校図書館の活用につなげている。

〇  計算の跡を残したり、解き方の説明をしたりしている。


健康面では、視力の低下、姿勢が悪くなるといった課題はほとんどの学校から報告がありました。どこの学校でも、目を休める、首のストレッチをするなど継続的に声をかけ、子どもたちが自分で気を付けていくようにしています。学力面では、書くことや辞書・辞典等を活用する機会が少なくなったことから、バランスを取りながら学習端末を使用する必要性があると、多くの学校が回答しています。
この他にも端末を使って、「友だちの悪口を書き込んでいる」「不適切な画像を撮影して送信する」「ゲームや音楽をダウンロードして聴いている」などの事案が起き、学校と連携しながら対応しています。端末の活用の仕方やルールについては、課題が発生したときはもちろん、年間を通して計画的に話し合ったり考えたりすることが大切だと思います。

—どんなルールをつくったらいいのかわからない保護者の方もおられるのではないですか。

教育長:冊子の最後に、端末を使うときの約束(例)を載せています。いくつか紹介しますので、家庭でルールを決めていく際の参考にしていただければと思います。

① 健康に気を付けて使おう

* 学習端末を使うときは姿勢よく

* 30分に1回は画面から目を離す

* 寝る前にはデジタル機器は使わない

* 自分の目を大切にする

* しっかりと運動をする

 

② 安心・安全に使おう

* 自分のパスワードを教えない

* 個人情報を守る

* 個人情報を入力しない

* 書き込みやメール内容を送信前に確かめる

 

③ ルールを守ってデジタル機器を使おう

* インターネットにのめりこまない

* 書き込みを見る人の気持ちを考える

* ホームページの文や写真を勝手に使わない

これらのルールは大人が一方的に決めるものではなく、子どもと一緒に話し合いながら作ることが大切だと思います。ルールを作った後は、子どもの成長や生活リズムの変化に合わせて、常に見直していくことも必要だと思います。

—有名なIT企業のトップの人たちは、自分の子どもにスマホを使わせていないという話をよく聞きます。

教育長:アップル社の創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が、我が子にはスマホを使わせていないという話は有名ですよね。自分たちが開発した製品だけに、それがもたらす危険性をよく知り得ていたのだと思います。このような情報を知り、家庭内のルールを見直そうとされた人もいるのではないでしょうか。
以前、「デジタル・シティズンシップ」の考え方についてお伝えしました。(第26回)大人が監視、規制するのではなく、子どもが行動の善悪を自分で考えて判断できる力を身に付けていくことです。この「デジタル・シティズンシップ」の約束では、守りにくいルールで子どもにストレスを与えることはしません。約束が守れなくても子どもを責めたりしません。保護者は子どもを信頼し、関心を持って見守ることが大切だと伝えています。
今後も、各学校や家庭で日常的に学習端末を活用していく子どもたちが自分で状況を把握し、課題を改善していく方法を考えていけるようサポートしていきます。

びんまる6月号より

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