- 三好教育長に聞く福山100NEN教育
三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第51回
わくわくドキドキ衝撃のニューヨーク
今回は、対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」(※)に参加した福山高等学校の9名の生徒の皆さんが、市役所に表敬訪問されたときの様子を三好教育長から伺います。
―参加された高校生は、どのような報告をされたのですか。
教育長:ニューヨークを訪問し、国連本部などを見学して世界平和について考えたこと、現地の高校生と互いの国の魅力について意見交換したことなどを報告していただきました。8日間の活動報告をされた後、教育委員さんと対話した内容の一部を紹介します。
教育長:衝撃を受けたエピソードを話していただけますか。
生徒A:現地の学校に行くと、黒人や白人、アジア系の人やスパニッシュもいて、人種が多様でした。アメリカ人は、日本人がいても異質に感じていなくて、普段通りの行動をしていました。廊下に座っていたり、バスケットボールを持っていたり、朝食を食べながら授業に来たり…。日本では考えられないようなことばかりで、すごく自由だと感じました。プレゼンをしたときも、リアクションが大きくて、発表している自分たちが楽しくなりました。
生徒B:授業で発表する時、アメリカ人は次々に発言して、質問もしていました。日本では全然手が挙がらなかったりします。私たちも自分の意見に自信を持って、積極的に発表するべきだと思いました。
生徒C:アイスクリームを買おうとして財布を取り出したんですけど、「No cash」と言われました。日本では、現金が使えない店はないですよね。アメリカは、電子マネーは使えるけど、現金が使えない店が多くて、とてもびっくりしました。
生徒D:ホストマザーに日本について聞いたとき、「女性が働く割合が少なくて、ジェンダー平等がなされていない」と言われました。男性、女性、それ以外の多様な性が、認められるようにしていきたいと思います。
生徒E:最近「LGBTQ+」ということが言われています。私の意見としては、「LGBTQ+」の人もいれば、「LGBTQ+」の人を受け入れる人もいれば、受け入れられない人がいていいと思います。それぞれ生きてきたバックグラウンドがあって、他人から良い悪いと決め付けられるのは、多様性から外れているのではないかと思います。それぞれが自分自身の意見を持って、誰からも悪いことだと決めつけられないようなゾーンをまず学校から作っていって、ゆくゆくは日本全体を本当の多様性溢れる社会にしたいと思っています。
神原委員:プレゼンの場面を見て、英語の文法などはおいておいて、表情豊かに楽しみながらコミュニケーションしている様子にとても感動しました。相手の国・人を知り、自分の国・人を知ってもらって、高校生が繋がっていく姿を見ていると、未来が明るいと思いました。教育長の質問に対しても、次々に発言されるそのコミュニケーション力は、もともと持っておられたかもしれないけれど、今回の経験を通して、より自信がついたのではないか思います。その発信力を活かして、これからどんどん他の方に伝えていってください。
横藤田委員:今、AIやチャットGPT、スマホで自動翻訳などありますけど、それだけでは人と人との気持ちは通じないと思います。会社でタイの人と翻訳機で話しますけど、やはりワンテンポ遅れる感じがします。皆さんのように英語を勉強されて、いろんな国の人と会話ができるようになれば、素晴らしい世界が待っていると思います。皆さんお気づきになったと思いますが、日本の常識が世界の常識ではありません。日本は島国ですから、いろんな情報が入りにくいところがあります。自分が一歩外に踏み出して、世界の風を感じ、日本と世界の価値基準は違うという尺度を持って、これからもいろんなことを経験していかれればと思います。まずは親御さんに感謝を。
金委員:私の最初の海外旅行は、ヨーロッパでした。ドイツのハイデルベルクにある大学病院へ行きました。ドイツ語はできなくても、相槌をうつだけで気持ちが通じ、医学用語は世界共通ですから、それだけでも通じました。英語が話せることも大事ですけど、意思疎通を図るには、ただ言葉が上手いだけではだめです。自分の考えをしっかりもって、それを表現できることが大事だと思います。高校生でこのような経験をされていることが、本当にうらやましく思いました。皆さんそれぞれ違うと思うんですけど、今回の訪問で一番印象が強かった場所はどこですか。
生徒F:ワールドトレードセンター、9・11の跡地です。広島の平和資料館のような空気を感じました。たくさんの観光客が訪れていて、平和を思う気持ちは、広島もニューヨークも一緒だと思いました。違いもたくさんあったけれど、共通点を見つけることができました。
生徒G:テロの悲惨さを感じると同時に、ワンワールドトレードセンターという新しい高いビルがそびえ立っているのを見て、ニューヨークは負けないぞという強い意志を感じました。
生徒H:タイムズスクエアは、建物全部が見上げても、見上げ切れない、目が追いつかないくらい高くて、ずっと感動していました。アメリカへ行く前に、大阪へ行って、「建物が高いなあ」と思って見ていたけれど、比にならないくらいの高さでした。あと、アメリカのエレベーターに乗ったら、ほぼ毎回話しかけられました。日本では、エレベーターで知らない人と会話した経験がなかったので、コミュニケーション力がすごいと思いました。
生徒I:ニューヨークへ行く前に、「ニューヨーク証券取引所に行きたい。行けないけど行きたい。」と言っていたら、本当に行けたので、とてもうれしかったです。口に出して言ったことは叶うと感じました。
生徒E:アメリカの学校は、カラフルだと思いました。日本の壁は、大体白色ですけど、壁に虹色の羽の絵などが描かれていました。LGBTを象徴するレインボーフラッグも描かれていて、多様性を表していると思いました。
生徒D:国際連合の本部に行った時、女性スタッフの割合がすごく多かったです。日本よりも女性が活躍していて、
スーツ姿がかっこいいと思いました。
生徒A:世界の中心と言われる場所にたくさん行って、すべてに驚いたけれど、最後に言われた言葉が印象に残っています。「今、自分たちは日本からアメリカへ架けられた橋を渡った。今度は自分たちがその橋を架ける側になってほしい。」
―このような高校生の言葉を聴くと、とても頼もしく心強いですね。
教育長:そうですね。私や教育委員さんの質問に対して、返ってくる言葉の一つ一つがとても印象的でした。福山中高等学校の校歌の歌詞にあるように、「学び続けて夢を見つけ、友といっしょに夢をはぐくみ、願い続けて夢をかなえる」そんな大きな経験になったと思います。
先月は、G7サミット(先進7カ国首脳会議)が開催され、核兵器のない平和な世界の実現に向けたメッセージを広島から世界へ発信しました。事前に開かれたジュニア会議では、平和・持続可能性・多様性をテーマに議論する高校生の姿もありました。小さな頃から、日々の生活の中で、授業の中で、課題に気付き解決しようとする。解決策を考えて提案すると、自分たちの力で変えることができた。そのような経験が、福山・広島を日本・世界を自分たちでよりよくしていこうとする力に繋がっていくのだと思います。
※ 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」
日米の間で、対外発信力をもち、将来を担う人材を相互に派遣し、政治、経済、社会、文化、歴史及び外交政策等に関する理解の促進を図るとともに、日本の外交姿勢や魅力等について、参加者から積極的に発信してもらうことで対外発信を強化し、日本の外交基盤を拡充する。
被災地である広島・長崎の高校生と米国の高校生の相互交流を前提に、被爆地の実相に触れてもらう歴史的体験とともに、今を生きる若者同士の交流を通じて、平和や相互理解の大切さを日米の高校生が実感することを目的としている。
INFORMATION基本情報
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