• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第46回

「福山100NEN 教育」8年目を迎えて

—新しい年を迎えました。感染状況を心配し、年末・年始はご家庭で過ごされた方が多いのではないでしょうか。高校入試を控えているお子様がいる保護者の方は、感染状況に加え、今年から入試制度が変わることも気にされていると思います。広島県の高校入試がどのように変わるのか教えていただけますか。

教育長:2023年が始まりましたね。今年もどうぞよろしくお願いします。  いよいよ多くの高等学校で、入試が始まります。どの子にとっても、元気で入試当日を迎えられることが一番ですよね。保護者の方は、お子様の体調を気にかけながら、見守っておられることと思います。
広島県では、今年から新しい公立高等学校入学者選抜が始まります。制度が変えられた理由の一つは、15歳の子どもたちに「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」の3つの力を身に付けてほしいとの願いからです。
新しい制度のポイントは、次の通りです。

❶受検生が主体的に志望校を選べるように、全ての高等学校で、教育目標や入学者受入方針などを事前に公表します。
❷受検生の調査書に記載する内容を簡素化し、志望校・氏名・性別・学習の記録(評定)のみとします。
❸入学者選抜に係る期間を短縮して、各中学校・高等学校の教育活動の充実を図ります。
❹受検生全員に自分自身のことを表現する「自己表現」を実施します。

—4つ目の「自己表現」を気にしている子どもたちや保護者の方が多いのではないでしょうか。

教育長:そうですね。「自己表現」という言葉だけを聞くと、人前で話すことが苦手だと思っている人は、不安な気持ちになるかもしれません。しかし、この自己表現は、話し方などのテクニックを見るものではありません。自分が描いた絵や作ったもの・賞状なども持ち込むことができます。ダンスを踊ったり、楽器を演奏したりすることも可能です。事前に撮影した動画(30秒以内)や写真等をタブレットで提示することもできます。このように、子どもが自分で選んだ言葉や方法で、自分自身のことや高等学校に入学した後の目標などについて表現するものです。得意なことや好きなことはもちろん、上手くいかなかったこと、挑戦し続けていることなど、今の自分を自分らしく表現してほしいと思います。このことが、とても大切です。

—学校では、「自己表現」に向けて、どのような取組をされているのですか。

教育長:「自己を認識し、自分の人生を選択し、表現する力」は、すごく大きな力ですよね。県では、「これらの力は、小学校段階から(強いて言えば乳幼児期から)、自分の考えをしっかり持たせ、先生や友だちに心を開いて何でも話すこと(自己開示)ができる環境の中で、意図的・計画的に育む。」と示されています。「強いて言えば」ということが、余分だと思うくらい乳幼児期からしっかりと育むことが大事だと思います。中学生になった子に、急に「考えなさい」「自分で選びなさい」と言っても、選べませんよね。乳幼児期から、例えば、ドーナツとケーキ、どちらが食べたいのかを自分で選ぶ。パズルで遊びたいのか、砂場で遊びたいのか、やりたいことを自分で選択していく。毎日の生活の中で、うれしかったことや嫌だったことを表現していくからこそ、義務教育を終える15歳で、自分が好きなことや得意なことを認識し、自分がやりたいことを選択し、表現する力が付いていくのだと思います。入試の直前に、傾向と対策でトレーニングをするということではないと理解する必要があります。


「福山100NEN教育」がスタートしてこの7年間、一人一人の子どもの興味・関心、学ぶペースを大事にした授業づくりや多様な学びの場の整備等に取り組んできました。あわせて、幼保小連携・接続、コミュニティ・スクール導入に向けた仕組み等を整え、保護者・地域の皆様とともに、子どもたちの学びを充実させていけるよう取組を進めてきています。これらの取組すべてが、15歳の子どもたちに身に付けてもらいたい力を育てることにつながっていくと考えています。

—「福山100NEN教育」も今年で8年目を迎えますね。この間の取組を踏まえ、今の子どもたちの姿を見て、どのように感じておられますか。

教育長:「リアル&デジタル “学びが面白い” の深化」をテーマに掲げて取り組んだ2022年。いまだコロナ禍で、生活や気持ちに多くの制限がかかりながらも、いろんなことにチャレンジする子どもや先生の姿がありました。授業や学校行事において、子どもが自分たちで考え、計画して進めている事例がたくさんあります。先生たちの関わり方が変わり、子どもたちの姿が大きく変わってきていると感じています。


先日、福山法人会が主宰された「税に関する絵はがきコンクール」の表彰式に参加しました。そこで、太鼓など、子どもたちが演奏するアトラクションが素晴らしかったことに加え、司会の方がインタビューされたことに対して、子どもたちが自分の言葉できちんと応えていることに驚きました。それだけでなく、演奏前後の準備や片付けに、先生の姿は見えず、すべて子どもたちだけでやっていました。以前は、先生が誘導している場面を多く見ていましたので、3・4年前と大きく変わってきているなとうれしく思いました。先生が控えて、口や手を出さずに見守ることで、子どもたちの主体的な動きや言葉・表情が出てきていると感じます。

—先生の意識改革も進んで、子どもたちの主体が出てきているのですね。

教育長:そうですね。授業を見ていても、自分たちで学ぼうとする子どもの姿を多く見かけます。学習端末の活用も一気に進み、小学校段階から調べたことをスライドにまとめたり、動画を作成して発表したりしています。小中学生のお子様がおられる方は、冬休みの間に、端末上で作成しているものを一緒に見られてはどうでしょうか。きっと驚かれると思いますよ。
教えられたことをただ覚えるだけでなく、好きなこと・興味関心があることから調べ始めたり、自分の経験と結び付けて考えたりすることが、本物の学力につながっていきます。学校で身に付けた知識を常にアップデートしながら、学び続ける力で未来を切り拓いていく。その力をすべての子どもたちにつけていくことが、義務教育の役割だと強く思っています。
「福山100NEN教育」8年目がスタートしました。自ら考えて行動する子どもたちが、学校の姿を大きく変えてきています。今年も、一人一人みんな違うことを大事にしながら、それぞれが伸びていくために、学びを中心においた取組を進めていきます。

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