三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第48回

福山市幼保小合同研修会

—「福山100NEN教育」の取組の中で、就学前と学校の学びをつなぐ幼保小連携が進められています。今回は、2月13日に行われた「幼保小合同研修会」について三好教育長からお話を伺います。
―どのような内容の研修が行われたのですか。

教育長:校長・施設長・連携担当者約450人が、連携校区の小学校に集まり、オンラインで行いました。前半の全体会は、今年度の本市の取組を振り返り、パイロット校区である光小・緑丘小学校区が実践発表を行いました。その後、アドバイザーである朝倉淳先生(安田女子大学・安田女子短期大学客員教授)から、本市の実践を取り上げながら「一人一人の育ちと学びがつながるカリキュラム」について講話をいただきました。
後半はオンラインから離れ、各会場で今年度の連携内容を振り返り、来年度の計画を立てています。

—パイロット校区では、どのような実践が行われているのですか。

教育長:学びの基盤となる言葉と数を子どもたちが獲得していく姿を共有しながら、幼保小の学びをつなぐカリキュラムを編成しています。実践発表の一部を紹介します。

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 緑丘小学校区(緑丘幼稚園・ももやまこども園・福山りじょう幼稚園)

1年生が秋の自然物を使っておもちゃを作り、年長児を招待して一緒に楽しむ「おいでよ秋のテーマパーク」という学習をしました。算数科「3つの数のたし算」の学習を使って得点を計算したり、国語科「ものの名前」で学習したお店屋さんの言葉を使ったりして、教室で学んだことを活かしていました。最後に年長児から「全部楽しすぎて、爆発しちゃった」という感想をもらい、1年生はとても満足していました。


今年度は、「※言葉と数のたつじんテスト」を活用し、分析したことを日々の授業やカリキュラムの改善に活かしています。特に正答率が低かったのは、「チーズをたてにさいています」という問題です。多くの子が、絵の動作と「さく」という言葉が一致していませんでした。

この結果を連携協議会で共有し、子どもたちが自然と言葉と数に触れていく場面をどのように設定していくかを協議しました。小学校では、授業の中で、スズランテープや新聞紙を使って、「さく」「ちぎる」「やぶる」という動作の違いを体験する機会をつくりました。子どもたちは、「『さく』って長四角のものを細長くすること」「『ちぎる』と小さくてくしゃくしゃになる」などと、動作を自分たちの言葉で表していました。さらに、「『切る』とは何が違う?」「まっすぐになること?」「『さく』もまっすぐになる!」「カッターを使うとき『切る』って言うよ!」「はさみも!」「道具を使うとき『切る』って言うんじゃない?」と、対話しながら言葉の意味を考えていました。

「さく」については、生活科で凧あげをしたとき、「凧のあしがさけた!」と言っていた子がいました。そのことが学年会の話題に上がり、知らなかった言葉を生活の中で使えるようになっていることに職員で喜びました。

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 光小学校区(霞小・天使幼稚園・草戸こども園・野上保育所・西保育所)

2学期に光小と野上保育所が何度も連携しながら行った「あきとなかよし」の交流の様子をお伝えします。1回目は、小学校で球根植えをしました。「どんな色の花が咲くかな」と会話が広がり、「お土産の風船カズラを家で植えたい」など、子どもたちからたくさんの言葉が出てきました。2回目は、1年生と年長児で緑町公園に秋を見つけに行きました。子どもたちは季節の変化に気付き、どんぐりを見つけて数や形の比べ合いをしていました。うれしかった経験から、「一緒に行った緑町公園をつくりたい」という声が子どもから出てきたので、合同で「秋ランド」を作ることにしました。3回目は「秋ランド」に向けて、秋の自然物で作った遊びをオンラインで交流しました。1年生は、年長児が作ったものを見て、自分たちにはなかった発想に驚いたり、「わたしたちと似てるね!」と自分たちの遊びと比べたりしていました。年長児は、どんな言葉で伝えようかと考えて、何度も練習しました。1年生から「説明上手だね」と言ってもらい、とてもうれしそうにしていました。4回目は、「秋ランド」本番です。1年生は、年長児が楽しめるように分かりやすく遊びの説明をしていました。年長児は、1年生が優しく声をかけてくれたこと、遊びが楽しかったことなど、うれしかった気持ちを言葉で伝えました。お家の人にも、小学校に行ってうれしかったことを伝えていて、体験と言葉がつながるよい機会となりました。

保護者の方からも、「遊びの説明や1年生とのかかわりを話す姿がうれしかった。」「たくさん交流して、小学生になる期待や意欲が今まで以上にわいている。」という声が届き、保護者の方の安心感にもつながっています。
これらの実践を整理し、子どもの姿をもとにカリキュラムを編成していくことで、「子どもの育ちと学びをつなぐ」という意識が高まっています。

教育長:2校区の実践発表後、朝倉先生から、「体験とともに言葉と数を獲得していく過程を大切にした取組になっている。」「実際の子どもの姿をカリキュラムに示し、カリキュラムが生きて働くものになるようマネジメントされている。」という講評をいただきました。

—楽しい体験の中で、子どもたちが言葉と数にたくさん触れている様子が伝わりますね。

教育長:「福山100NEN教育」の取組の中で、言葉と数を子どもたちが理解・獲得していく過程を見ていくことを大切にしてきました。子どもが発する言葉に意識を向けることが大切です。発表の中で、2校区共通した言葉の事例がありました。1年生の国語「たぬきの糸車」の中に、「いつもおかみさんがしていたとおりに、たばねてわきにつみかさねました。」という文があります。たぬきが、つむいだ糸を束ねて板の間に積み重ねる場面です。この文を子どもたちが動作化しようとしたとき、「わき」を体の「わき」だと思い、わきの下に挟もうとしたそうです。この場面は、他の小学校でも見ました。「わき」という言葉を聞くと、身近でよく使う体の「わき」を思うのは、無理もないことですよね。ただ、「つみかさねる」という言葉から、「何かおかしい…」と感じ、「わき」とは、「すぐそば・横」という意味もあることを知っていきます。知っていく言葉が増えていくと、わからない言葉があっても、前後の文脈から言葉の意味を考えていけるようになります。


数についても、子どもたちは就学前から、カルタ・トランプ遊びなどを通して、取れたカードの数を数えたり,差を求めたりしています。4つのサイコロを使ってすごろくをして、出た目をたし算しながら「たくさん進める!」と喜んでいる子もいました。野菜を収穫したときには、重さを量って比べるなど、遊びや体験を通して数量の感覚も身に付けています。

—園所・学校だけでなく、ご家庭でもお子さんの興味があることから言葉と数に触れる機会を増やしていくといいですね。

教育長:そうですね。小学校で楽しく学んでいくためには、遊びや生活の中で、子どもたちが自分で育んだ言葉を豊かに持っていることが大事です。遊びを通じて、言葉や数に触れ、考える機会があると、子どもは、国語・算数・理科…という教科を興味をもって学ぶことができます。
福山市教育委員会HP「学びの探究パイロット校」を検索していただくと、幼保小連携・接続に向けたこの間の取組や、子育て中の保護者の方の参考になる情報を掲載しています。お時間あるときにご覧いただければと思います。

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