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三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第43回

三好教育長に聞く 福山100NEN教育

「好き」というエネルギー

—毎月、紙面左下に「福山学校元気大賞」の受賞の様子を一部紹介させていただいています。教育委員会のHPには、受賞内容や表彰式の様子などが詳しく掲載してあります。「あなたの挑戦が素晴らしい☆」部門では、一人一人の挑戦が写真とともに紹介してあり、子どもたちがやっている内容を見て、いつも感心しています。

教育長:そうですよね。私も届いたものを見て、すごいなといつも思っています。表彰式で本人と会って、話をすることが毎回楽しみです。「あなたの挑戦が素晴らしい☆」部門は、コロナ禍の臨時休業中に、子どもたちが「なぜだろう?」「やってみたい!」と挑戦したことを教育委員会に届けてもらったことから始まりました。この3年間で、たくさんの挑戦が集まっています。

—印象に残っている挑戦を教えていただけますか。

教育長:たくさんありますが、最近では、中学生が作った信号機図鑑が印象に残っています。4歳の頃、家から見える点滅信号機に興味をもち、なぜ色が変わるのか、どのような仕組みになっているのかということが気になり始めたそうです。はじめは面白い形をした信号機を見つけては、写真を撮っていたようです。そのうち、製造年月日や型、製造会社などが知りたくなって調べていくと、一つの信号機を見て、「この信号機は、どのような街の歴史を見てきたのだろう」と想像することが好きになっていったようです。

倉敷市や尾道市まで、一人で自転車で行き、いろんな信号を写真に撮って調べていました。たくさん撮りためた信号機の中でも、お気に入りのものがいくつかあるそうです。写真の信号機は、リーデンローズ付近にあり、レンズが特殊で、県内では、福山市と尾道市しかないそうです。

—信号機のレンズを気にしてみたことは一度もなかったですね。赤色は右側か左側かと問われても、答えることが難しかったと思います。それにしても、信号機を見るために、尾道市や倉敷市まで自転車で行くなんて、それほど信号機が好きなのですね。

教育長:倉敷市には、広島県にはない樹脂製の信号機があると調べて、自転車で行ったけれど、すでに撤去されていたようです。でも、その帰り道に角形予告信号機を偶然発見できてうれしかったと話していました。子どもたちの「好き」というエネルギーの大きさは、すごいです。好きなことだからこそ、どうしても知りたいという気持ちから調べ始めます。図鑑を見たり、インターネットで情報を集めたり、実際に行ってみたり。その中で、いろんな言葉や知識が自分の知っていることとつながり、興味が広がって、どんどん吸収していくのだと思います。小学生では、恐竜好きな子が多く、生息していた時代・発見された場所・恐竜の分類・体長・体の特徴・食性など、詳しく調べている図鑑が届いています。この図鑑を作った児童は、2年生ですが、「全身の70%の骨が発見された」ということを書いていました。まだ割合の学習はしていなくても、全身の70%の骨がどれくらいなのかわかっていると思います。好きなことを見たり考えたり、調べてまとめていく過程を通して、多くの言葉と数に触れながら、歴史・地理・地層・動物の種類・生態系など、小学校の学習をはるかに超えた内容を自分で学んでいます。この図鑑は、72ページで終わっていましたが、最後のページに「まだつづきがあります」と書いてありました。何か一つ好きなことをきっかけに、知ることが面白いと思えるようになっていくと、そこからは自分で探求し、自分自身の力で伸びていく力を、子どもたちはもっています。

—小学校で文字を覚えて、本が読めるようになると、子どもはどんどん自分で学んでいけそうですね。

教育長:自分で本が読めるようになると、世界がどんどん広がっていきます。小学校で習わなくても、2・3歳で、興味をもったことからひらがな等の文字を覚え、本を一人で読んでいる子もいますよね。小さい頃から数に興味を示し、大学レベルの数学を学習している小学生もいます。そんな子もいるから、我が子に早く言葉や数を教えて、覚えさせた方がいいということではないと思います。パズルが好きで、47都道府県のパズルのピースを見ただけで都道府県名を答えている3歳の子がいました。お家の方は、パズルで遊んでいるその子の横で、「広島県」と言いながらパズルのピースを渡していたようです。そのうち、子どもが一人でやっているときに、パズルのピースをはめながら、都道府県名をつぶやいていることに気付いたそうです。親が何気なく言っていた言葉とピースの形を結び付けて、都道府県名を子どもが覚えていることに驚き、今度は、ひらがなのパズルで同様に遊んでみると、ひらがなもすぐ覚えたと言われていました。小さい頃から特異な才能をもつ子(ギフテッド)がいると言われています。「持って生まれた才能」という言葉もよく聞きますが、どの子も好きなことに夢中になって遊ぶ中で、自然に発揮している能力があるのだと思います。周りにいる大人が、その子がどんなものが好きで、何に興味をもっているのかを見つけることができれば、子どもはそこから自分でぐんぐん伸びていけるのだと思います。自分から面白がって何かをやっているときの子どものエネルギーは未知数で、子どもの可能性そのものです。

—「その子の興味をもったことから」ということが大事なのですね。そう思って改めて「あなたの挑戦が素晴らしい☆」部門での子どもたちの挑戦を見てみると、たくさんの可能性があふれていますね。

教育長:その可能性を感じて、表彰状の最後の言葉は「日本・世界の未来を創るのはあなたです」としています。表彰式で子どもに伝えると、「はい」という返事や大きくうなずく姿が返ってきて、とても頼もしく、うれしい気持ちになります。暑さも随分やわらぎ、読書の秋・スポーツの秋・食欲の秋と言われるように、何をするにもよい季節となりました。子どもの「好き」を見つけると同時に、大人も自分の「好き」を満喫し、力に変えていきたいですね。

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