• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第57回

大事な「もと」に立ち返る

― 先月は、多くの小学校で音楽発表会や学習発表会が行われていました。今年は全学年の発表が見られるなど、「コロナ以前の発表会に戻った」と、喜んでおられる保護者の声を聴いています。

教育長:そうですね。コロナ禍では合唱はせず、学年ごとで実施するなど、制限がある中でどのような発表会にしていくのかを、子どもと先生が一緒になって考えていました。今年度は、多くの行事を従来通りに戻すというよりは、試行錯誤してきたこの間の過程を踏まえながら、各学校でどのように実施していくかを考えています。
最近、小学校を訪問すると、発表会の練習をしていますが、行事に向けた練習も、ずいぶん変わってきたなと感じています。

― どのように変わってきたのですか。

教育長:数年前の練習では、「声が小さい」「もう1回」「ごそごそしない!」など、先生が指導する場面をよく見かけていました。しかし最近は、子どもが自分たちでよりよい発表にしていこうと考えて練習している姿が、歌声や態度に表れています。
先日ある小学校へ行くと、校長先生が「発表会に向けて取り組んできた6年生の姿を是非見てほしい。」と言われました。6年間で身に付けた力を、1~5年生に見てほしいという思いから、急きょ設定された場でした。発表前に6年生は、「きれいな声を出す」「鍵盤ハーモニカが苦手で今まで音を出していなかったけど、音を出していく」「動きを止める」など、これまでの自分を振り返り、それぞれの目標を立てたそうです。3人の担任の先生も、合唱、合奏、リコーダー奏と、指揮を役割分担し、子どもたちと一生懸命練習してきたと言われていました。
体育館に向かう1~5年生と一緒になりました。以前のように、びしっと整列して、一言もしゃべらずにというのではなく、挨拶を交わしながら、自然に並んで移動していました。体育館に入ると、少し話をしながら待っていました。

アナウンスが流れ、6年生が入場し始めると、会場の空気が一気に変わりました。心地よい緊張感が漂う中、最初の合唱では、声の高い子、低い子、声変わりした子など、一人一人の声が聴こえてくるようでした。リコーダー奏も、みんな同じ一本のリコーダーから、それぞれの音が響いていました。6年間を振り返ると、頑張ったこと、頑張れなかったこと、様々にあると思います。そうした中で、最後の発表会に向けて、「もっと声を出したい」「上手く演奏したい」という一人一人の気持ちが音に表現され、体育館中に響いていました。
発表が終わった後、1~5年生が感想を伝えたくて、どんどん手を挙げている姿に驚きました。また、それぞれのコメントがよかったです。1・2年生は「かっこよかった」「きれいだった」、3・4年生は「音がそろっていた」「大きい音と小さい音の切り替えがきれいで上手だった」、5年生は「すべてがダイナミックでした」と伝え、感じたことを自分の言葉で表現していました。

― 学年が上がるにつれて、表現する言葉が広がっていますね。

教育長:そうですね。同じ音を聴いても、感じ方や表現の仕方は様々です。しかし、感じたことを言葉で表現することって、なかなか難しいですよね。先日、中学校音楽の一斉研修に参加しました。授業をされた先生が、「音楽鑑賞した後、子どもたちから『明るい』『楽しい』といった言葉しか出ず、表現の幅が広がらない」と言われていました。そのことを踏まえて、その日の授業では、題材曲の歌詞の中から、「一番気持ちを込めて歌いたいところ」(推しフレーズ)を選択し、表現の工夫について考えていました。「一番好きなところ」とするよりは、表現の幅が広がると考えられたようです。音楽に限らず、全ての教科等における学習のベースとなるのは「言葉」です。そこに課題意識をもって授業をされており、子どもたちが音から歌詞に触れ、音楽を楽しんでいる姿を見て、とても嬉しくなりました。

― 「言葉」を大事にした授業が中学校にも、広がっているのですね。

教育長:この間、「子ども主体の学び」に向けて、学びの基盤である「言葉」と「数」の理解を深めていく授業づくりを進めてきました。それぞれの学校で、試行錯誤を重ね、行事の練習も含め、日々の授業が確実に変わってきたという手応えを感じています。そんな今だからこそ、大事にしていく「もと」をしっかり見据えて授業づくりをしていくために、改めて学習指導要領に立ち返る研修を行いました。

― どんな内容の研修だったのですか。

教育長:各学校の校長と主任の先生2人が参加し、3日間連続で行いました。教育委員会内で、国語・社会など9教科について、学習指導要領を根拠に、「何のために学ぶのか」を示す資料を作成しました。研修では、その資料を教科担当が説明し、改めて学習指導要領に立ち返り、各教科を学ぶ意味を考えました。各学校は、その資料をもとに、自校の教材研究、子ども主体の授業等を振り返り、授業の質を向上していくための具体的な取組を協議していきました。その中で、国語は「言葉」、算数・数学は「数」を学ぶ教科であり、その「言葉」と「数」が、全ての教科の基盤であることを改めて共有しました。

― この図の↑が、上向きと下向きにあるのは何を示しているのですか。

教育長:上向き↑は、身に付けた言葉と数をベースに各教科を学んでいくことを示しています。下向き↓は、各教科の学習を通して、言葉と数の理解を深めていくことを示しています。言葉と数の力が不十分な場合、専門的な教科が学習できないということではありません。教科の学習で知りたいことを調べていく中で、言葉と数の理解を深めていくことができます。

先ほどの音楽の授業であれば、「楽しい」で終わるのではなく、自分が感じていることを表す言葉を探したり選んだりしていく。そうすると、音楽を通して、新たな言葉を獲得していきます。国語の時間に、知らなかった言葉の意味を説明されても、自分がその言葉を使おうとしなければ、定着せず忘れてしまいます。音楽の楽しさに触れながら、イメージを伝える言葉を見つけて使えば、自分のものになり、表現する言葉を豊かにしていくことができます。これは音楽に限らず、他の教科でも同様です。日常生活で使っている言葉は、限られています。日常会話だけでは、語彙は増えていきません。各教科の学習を通して、学べる言葉がたくさんあります。
この研修を今後の校内外研修へつなぎ、学校図書館等活用しながら,学びの基盤となる「言葉」と「数」の理解を深める授業づくりを着実に進めていきます。
ご家庭でも言葉に立ち止まって、お子様との会話を楽しんでみてください。「〇〇ってどういうこと?」と聞いてみると、結構盛り上がりますよ。

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