三好教育長に聞く 福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第40回

テーマ  幼児期と児童期の学びをつなぐ

—今年3月に決定した「第三次福山市教育振興基本計画」(2022年度から2026年度の5年計画)において、学校教育で力を入れることの一つに、就学前教育と小学校教育の連携・接続が示されています。今回は、「幼保小連携教育の推進」に向けた取組について三好教育長からお話を伺います。

教育長:「福山100NEN教育」の取組の中で、幼保小の連携にも、これまで取り組んできました。連携が上手くいっている地域もあれば、距離的なこともあり、十分できていない地域もあります。まずは、公立・私立も含めて、就学前教育と義務教育をつなぐ仕組みをしっかりとつくっていく。そして、幼児期と児童期の学びがつながるよう、保育・教育の質的向上に取り組む計画を立てています。そのスタートにあたり、先月、「福山市幼保小連携教育キックオフ会議」を行いました。最初に、私が幼保小連携の推進にあたって話をした後、アドバイザーをお願いしている安田女子大学・安田女子短期大学朝倉淳客員教授と慶應義塾大学環境情報学部今井むつみ教授に挨拶をいただきました。その内容の一部を紹介します。(詳細は、福山市教育委員会HPへ掲載)

―幼保小連携教育キックオフ会議―
〇 「幼保小連携の推進にあたって」

就学前教育と小学校教育を虹のかけ橋でつないでいきたいという思いで、この会を設定させていただきました。
福山市幼保小連携教育は、「すべての子どもたちが、乳幼児期における子どもの自発的、創造的な遊びや体験を通した育ちと学びを基礎としながら、安心感を持って小学校生活に円滑に移行し、自己を発揮し成長していくために、就学前教育と小学校教育の連携・接続の仕組みを構築し、内容の充実を図ること」を目的としています。今日は、就学前教育と小学校教育をつなぐ仕組みをつくり、幼保小連携の意義を共有していくスタートの会となります。
本市では、市制施行100周年を迎えた2016年に、「福山100NEN教育」を宣言しました。日々の授業を中心とした教育活動を通して、これからの社会を生きていく力「21世紀型〝スキル&倫理感〟」を育成し、行動化できる力を育んでいくことをめざしています。
広島県では2014年に、「広島版『学びの変革』アクションプラン」が出されました。その中で、知識の獲得を中心とした知識ベースの学びから、資質能力の育成をめざした主体的な学びに変えていく方針が示されました。それから3年後の2017年、「『遊び学び育つひろしまっ子!』推進プラン」が出されました。この中で、遊びを通して総合的に5つの力(「感じる・気付く力」「うごく力」「考える力」「やりぬく力」「人とかかわる力」)を育んでいくことが整理されました。乳幼児期に、この5つの力を育むことは、小学校以降の教育の基盤となり、これからの社会で活躍するために必要な資質・能力へとつながることが示されました。
国でも、2015年に、「スタートカリキュラム スタートブック」が出されました。義務教育は、ゼロからのスタートではない。子どもたちは幼児期にたっぷりと学んでいる。学びの芽生えがあることを踏まえて、義務教育をスタートしていくことが示されています。
国・県の動向を踏まえて、2017年、小学校入学時、すでに身に付けている力に差があることを前提に、全ての子どもたちに確かな学力を付けることを目的として、小学校「学びづくり」フロンティア校事業を始めました。義務教育がスタートした時点で差がある。生まれた環境によってできた差を埋められないまま9年間が終わったのでは、公教育の責任を果たせないという問題意識がありました。改めて、学力の基礎となる言葉と数を子どもたちが理解・獲得していく過程を見ていきました。小学校2校へ指導主事が毎日入り、国語と算数の授業を動画に撮り、子どもの発言・姿を記録し続けました。そこには、カード遊びを通して何度も繰り返しながら、10までの数の合成・分解を学ぶ子どもの姿、物語文の動作化を通して、言葉の意味を獲得する子どもの姿がありました。この取組で明らかになったことは、「できる」ことと「分かる・理解する」ことは必ずしも同じではないこと。一人一人、「分かる・理解する」過程や方法、スピードは異なること。言葉と数を獲得していくには、対話しながら動きながらということが必要だということです。そこで、「学びが面白い」ということは、ただ表面的な「面白い」ではなく、「知りたい」「わからない」「できるようになりたい」という内発的動機付けに基づくものだと整理しました。


広島県では、義務教育の終わり15歳の生徒に身に付けておいてほしい力として、「自己を認識する力」「自分の人生を選択する力」「表現する力」を設定しています。これらの力は、急に付くものではないということは、誰しも理解できると思います。急に「自分で選びなさい」と言っても、選べません。乳幼児期から、食べたいものを選ぶ、やりたいことを選択していく。その中で、うれしかったことや嫌だったことを表現していくからこそ、15歳で力が付いているのだと思います。
改めて、福山市幼保小教育が連携して、しっかりと虹のかけ橋をかけ、つないでいく。校長先生、施設長の先生方、子どもに関わるすべての人が、一緒に頑張っていく組織を作り、取組を進めていきたいと思います。すべては子どもたちのために、ともに頑張っていきましょう。

 

〇 アドバイザー挨拶
【安田女子大学・安田女子短期大学 朝倉淳 客員教授】

福山市の幼保小連携教育に関わることになり、大変うれしく思っております。保育・教育と学校教育の連携・接続は、子ども一人一人の成長の観点から考えて、非常に大事な営みです。加えて今日では、急速なデジタル化の進行、二年以上にわたるコロナ禍によって、幼保小連携接続は、一層重要になってきていると感じます。
AIの時代になってきて、問いかければすぐ情報を得ることができます。そのような時代において、「知識」をどのように考えたらいいのか。子どもたちにどのような資質・能力を育てていけばいいのか。子どもたちはそもそもどのように育つのか。これからの教育においては、このようなことが大きなテーマとなり、決して逃れることはできません。マスク着用、オンライン授業など、今までそれぞれの経験の中でイメージしてきた就学前保育・教育や学校教育とは違う子どもたちの姿が存在しています。人類が始まって以来の大きな変革期に直面していると思います。もはや、連携・接続なしに、よりよい保育・教育を展開することはできません。さらには、限られた組織だけでは取り組むことができない状況でもあります。これからは、いろいろな組織が体制を組んで、情報を共有しながら、新しいものを作っていくスタイルが求められてきます。様々な課題もありますが、子どもたち一人一人のよりよい成長を願いつつ、一緒に取り組んで参りましょう。

【慶應義塾大学環境情報学部 今井むつみ 教授】

幼保小をつなぐ連携協議会が発足して、こんなにうれしいことはありません。これまで広島県の幼児・義務教育に関わらせていただき、幼保小連携の大切さを言い続けてきました。幼児の言語発達、概念発達という分野の研究から考えると、本当に当たり前のことです。小学校で楽しく学ぶためには、遊びや生活の中で、子どもたちが自分で育んだ言葉の力、知識を豊かに持っていることが大事です。幼児期の遊びを通じて、数や量に触れ、考える機会があると、子どもは興味を持って、学校の算数、理科という教科に臨むことができます。
私は、小学生のつまずきの原因を明らかするため、県教委と一緒に言葉と数に関する調査を開発しました。実施にあたっては、福山市教委にもお世話になり、小学生が言葉と数をどのように理解しているのか、衝撃の結果を得ることができました。先生方には、子どものつまずきを理解した上で、そのつまずきをほぐしながらも、さらに子どもが自分で考えるように導いていただきたいと思っております。それは決してやさしいことではありません。先生として熟練する必要があります。これまで福山市の多くの先生方と交流してきた経験から、先生方は、十分にできる資質・スキルを持っておられると私は確信しています。
幼保小連携によって、福山市の子どもたちが楽しく生き生きと学び、「学びが面白い」という気持ちをもって、広島県、日本を担う人材に育っていくことが、私の強い願いです。

 

教育長:アドバイザーのお二人の先生方から、このような挨拶をいただいた後、幼保小連携協議会の設置に向けた説明を行いました。現在、連携校区と各施設・各学校で連携担当者が決定したところです。

—まさに「キックオフ」という名の通り、「これから始まるぞ!」という内容の会議だったのですね。ママ・パパ・先生とつくる情報誌「びんまる」は、市内の店舗・病院・教育関連施設に加え、保育所・幼稚園・こども園から保護者の方へ配付させていただいています。子育て中の読者の方も多いので、今後の幼保小連携の取組について、是非紹介してください。

教育長:もちろんです。学校・保護者・地域の方が一緒になって考えていくことで、子どもたちの学びがより充実していきます。6月末には、連携校区の小学校に校長・施設長・連携担当者が集合し、「幼保小合同研修会」を行います。オンラインで、今井先生の講話を聴いた後、各会場で連携協議会を行い、授業・保育参観など、連携・接続に向けた年間計画を立てていきます。これらの取組について、今後いろんな場を通して発信していきますので、是非皆様のご意見・ご感想を学校・教育委員会へ届けてください。

びんまる7月号より