- 三好教育長に聞く福山100NEN教育
三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第2回
三好教育長に聞く 福山100NEN教育
新採用の先生へメッセージ
─「福山100NEN教育」4年目は、どのようなスタートでしたか。
教育長:今年1月の校長会で、「福山100NEN教育」4年目のテーマである「カラフル」について話をしました。色や形がさまざまであることで、楽しく豊かな世界が広がります。教室の中でも、学校の中でも、それ以外の場所でも、それぞれがそれぞれであることの素晴らしさを「カラフル」という言葉に集約し、一人一人の学びを大切にした「子ども主体の学び」づくりを進めています。
そして、今年度最初の校長会で、「私は五感をフル稼働させて役割を探し続け、臨機応変に何でもします」と話しました。
─「何でもします」というと、昨年度も教育長ご自身が、小学校・中学校・さまざまな学校で授業をされたとお聞きしました。
教育長:はい。先生と一緒に学びをつくっていきたいという思いで授業をしました。子どもの中には、たくさん知識があり経験があります。子どもの方がはるかに知っていることもたくさんあります。私の役割は、子どもたちの表情を見たり、つぶやきや問いを聴いたり感じたりしながら、子どもが学び始めるところを探したりつくったりすることです。そもそも「教えよう」と思っていませんから、先生には「学年・教科を問わず何の授業でもします」と言っています。今年もやりたいと思っています。
授業をするだけでなく、実際に学校を訪問して普段の学校の様子を見ることで感じることがたくさんあります。子どもたちや先生といろいろなことを話したり聞いたりしながら、一緒に学びをつくるために、何でもやっていきたいと思っています。
また、本市の学校図書館整備を監修してくださっている児童文学評論家の赤木かん子さんからの提案で、教育長室にミニ図書館ができました。たくさんの先生に教育長室に来ていただき、リラックスできる空間で本に触れてもらったり、話をさせてもらったりしたいと思っています。新採用の先生にもどんどん来ていただきたいですね。
─今年度、福山市に赴任された新採用の先生は何名いらっしゃるのですか。
教育長:小学校教諭92名、中学校教諭32名、養護教諭8名、栄養教諭1名、合計で133名です。
─教育長は、もうお話しされましたか。
教育長:はい。新採用者は、1年を通して、県や市で14日間の初任者研修があります。
4月16、17日に、福山市で行う最初の研修があり、話をしました。
そこで話したことは、子どもたちを同じように揃えたり同じことをさせたりすることが学校や教育の役割ではないということです。目の前にいる子どもたちは、例えば同じ制服を着て同じようにこちらを向いているけれども、思っていることも違う、知っている漢字も読む力も違う、跳んだり走ったりする力も違う、違うことばっかりです。
小学校1年生といっても、全然違います。心の発達も体の発達も、経験した量も読んだ本も。「小学校1年生だから、大人が教えてあげないといけない」と思っていたらとんでもないです。インターネットなどを通して、生まれたときから情報があふれる中で、いろいろなものを見たり感じたりしてきているのですから。
「それぞれが違う」ということから始まり、目の前にいる子どもたちの発する言葉や反応の中でどうしていくかということを日々考えていくことが先生の役割です。そのことを自分の中でしっかり持ってスタートしてほしいと思っています。
─まさに、「カラフル」であることですね。教員としてのスタート地点で、個々の違いが大切であることをしっかりと持つことが大切ですね。
教育長:若い先生といっても、自分が受けてきた教育は、みんなと同じようにする・できることが大切にされてきたのだと思います。先生になるために大学で学ぶことも、指導案の書き方であったり板書の仕方であったり「子どもたちにどう教えるか」ということが中心です。
子どもたちが黙って座って、先生の話を聞いている。先生が言うことに「はい」と大きな返事をして、質問をしたら先生が期待する答えがどんどん返ってくる…。それが、指導力がある先生だという考え方は、強くあると思っています。
そんな中で、新採用の先生が「子どもたちに同じようにさせることができない」とか「質問しても考えていたような答えが返ってこない」など、「しんどいな」「だめだな」と思うことがあるとしたら、それは全然だめではないんです。そこからがスタートです。子どもたちのそれぞれを見ながら、どうやっていくかを考え、悩みながらやっていくのが我々の役目であって、静かにさせて、みんなこちらを向かせて、揃えて・・・、ということが役目ではない。
こういう話をさせてもらうと、うなずいて聞いてくれたり少し笑顔になってくれたりする先生がたくさんいました。しかし、研修が終わって教室に戻ると、揃えようとしてうまくいかないことに、また「だめだな」と思ってしまうのだと思います。
しかし、子どもたち一人一人の違いを大切にしながら、学びづくりに取り組んでいる先輩の先生たちと一緒に、自分らしく頑張ってほしいと思います。私自身も、学校に行ったり、教育長室に来てもらったりしながら、いつでも話をしたいと思っています。
─先生方に、子どもたちの素晴らしさと、それを通した教員としての仕事の素晴らしさを実感していただきたいですね。
教育長:1年目から担任をして、毎日授業をする、子どもと向き合う、保護者や地域の方ともやりとりする。その仕事は10年目、20年目の先生と同じ。こんな職業、先生しかないです。逆に言えば、1年目から全部任されているんですよね。
新採用の先生には、「子どもたちがきちんとしているからうまくいっている。していないからうまくいっていない」というイメージを捨てることを伝えました。「きちんとしている」とは何なのか。子どものさまざまな思いや違いを大事にせず、先生が思っている中に閉じ込めて引っ張っていくことが「きちんとしている」ことではない。それが指導力ではない。いろいろなことを感じながら、どういう問いを出すか、すぐに注意したほうがいいのか少し様子を見たほうがいいのかなど、悩みながら今の教室や場面の中でどういう答えを探していくか、それをやり続けるのが先生の仕事だと思っています。そういう面で大変だとも言えるし、逆に、他の仕事にないやりがいがあるとも言えます。
私が新採用の頃を思い出すとき、子どもたちと一緒に、地域や保護者の皆様に育ててもらったという思いがしています。教育委員会としても、しっかりと新採用の人たちに力をつけていく取組をしていきます。学校においても、さまざまな支援をしながら取り組んでいきますので、子どもたちとともに教職員も育てていただきたい、このことをよろしくお願いします。
びんまる2019年5月号より
※最新の情報とは異なる場合があります。
ご了承ください。
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