三好教育長に聞く 福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第3回

「子ども主体の学び」をつくる教師の役割

─「「福山100NEN教育」4年目のテーマは、「『子ども主体の学び』全教室展開 〜学びが面白い〜 カラフル」ですね。「面白い授業」をするために、先生方は、どのような研修を行われているのですか?

教育長:「福山100NEN教育」をスタートした4年前から、原則、第3木曜日を市内一斉研修日として、児童生徒の下校後、全教員が、授業づくり等に係る研修を行っています。小学校は、校内研修を中心にしながら、他校の研修に参加したり、年に2回、同じ教科の研究をしている学校が集まって合同研修をしたりしています。中学校は、特に、小規模校の場合、教科を担当する教員が学校に一人の場合が多く、校内で同じ教科の教員同士が授業を参観したり交流したりすることができない状況がありました。そこで、学校の枠を超えて同じ教科の教員が集まって研修することで、教科の専門性を高めています。

 また、昨年度から、毎月1回の市内一斉研修や各種研修講座とは別に、教員が参加しやすいように、授業終了後の15時30分から16時45分の時間で、「子ども主体の学びづくり研修」を定期的に行っています。「自らの意思で参加!」をコンセプトにその都度希望者を募り、昨年度は、小学校12回の実施で延べ967人、中学校は5回の実施で延べ217人の教員が参加しました。

 日々の授業の中で工夫していることや困っていることを交流したり、授業の動画や国・県の動向などから「学ぶ」とは何かを考えたりして、自分の授業に生かせていけるように取り組んできました。今年度も計画し、実施します。

─研修等を通して、子どもたちが主体的に学ぶ授業へと変わってきていますか?

教育長:全国学力テスト意識調査の結果では、子どもたちの「話し合う活動をよく行っている」「自分たちで課題を解決する学習に取り組んだ」という数値が高まり、80%を越えています。

 私は、年間を通して時間があると学校に行って授業を見ています。子どもたちが静かに集中して考えている姿や、「どうして?」の一言から様々な意見が飛び出し盛り上がっていく姿に見入り、聴き入ってしまうことがよくあります。また、一見、ガヤガヤしているように見えるけれど、分かったことを言いたい思いが大きな声になったり、資料や辞書を取りに行って調べたりするなど、自ら学びに向かう姿を見ることが、増えてきたという実感を持っています。

 その一方で、子どもたちは発表したり話し合ったりしているけれども、教師の質問や指示に答えるだけであったり、友達の考えを聞いて「分かりました」と言っているけれども本当に分かっているのか疑問に感じたりする場面もよく見ます。

─どうしたら、福山100NEN教育が目指す「子ども主体の学び」へと変わっていくと思われますか?

教育長:子どもはもともと意欲的です。これまでの生活の中で、たくさんの知識や経験を持っています。だから、同じものを見ても、どのように感じるかは、さまざまですよね。

 しかし、教師が質問をした後、「考えましょう」とか「二人で話し合いましょう」などと時間を区切り、時間が来たら「発表しましょう」と促す場面をよく見ます。話し合う時間や考える時間、発表する場をつくってはいるのですが、すぐ考えられる子もいるし、そうでない子もいますよね。子どもたちは一人一人ペースが違うので時間がかかる場合もあります。

 教師の質問から授業が始まっても、子どもたちが自ら考え調べはじめることなしに、学びは始まりません。もちろん、時間を意識することも大切ですが、自分で課題を見つけたり物語を読んで楽しんだりするのは、自分なりに感じたり読んだりしないとできません。その時に、時間や話し合い方などを決められすぎると、主体的な学びにはならないです。
このことをもう少し大事にする必要があると思っています。

─一人一人の学び方に対応していくということですか?

教育長:はい。教師は、授業の準備はしていくけれど、一方的に教えるのではありません。子どもの反応や表情、子どもの問いや疑問からその場で授業を組み立てることが必要で、子どもの気づきや意欲を感じながら、その場で授業を考えるのが先生の役割です。

─先生も、子どもたちと一緒に考えるのですね。

教育長:そうですね。でも、「これが正解」ということはありません。ここの場面はもっとこうすれば良かったなぁとか、授業後に子どもが書いたものを見て、こんな意見を考えていたのになぜ授業の中で生かせなかったかなぁなど、反省はいっぱいあります。そうやって「子どもがどう学んでいるか」を見ながら、子どもと一緒に授業をつくっていくんです。

 また、子どもたちが持っている「やりたい」「知りたい」「なぜ?」ということを、言いたいように言わせれば「学び」になるかというとそうではありません。そこには、教師自身が教科や教材に向き合い、理解を深め、「教科の面白さ」を実感することが必要だと思います。

 今年度、民間企業が開発した、学習者を中心にした学びの場づくりを体験的に学ぶ研修プログラムを導入しました。各中学校から希望があった教員や校長・教頭の35名が、主体的で対話的な学びの環境を体験する合宿、最新の学習理論による背景理解、新しい学びの場をつくる実践等を通して、「学び」を理解し、教師自らが「主体的な学び」の実践者となる研修です。こうした研修を始め、一斉研修、子ども主体の学びづくり研修などを通して、すべての子どもたちが「学ぶことが面白い」と実感できる「子ども主体の学び」をつくっていくスタートに立ち、授業を変えようとしています。

─子どもも先生も「面白い!」と実感できる授業。想像するとワクワクしてきます。先生方、頑張って下さい!

教育長:5月号で紹介した初任の教職員も、日々頑張っていますよ。先月までに、142人、全ての初任者の学校を訪問し、授業を見たり休憩時間に少し話をしたりしてきました。

 もちろん、悩んだり不安に思ったりしていることもたくさんありますが、「子どもがかわいいです」「成長していることが伝わります」「自分で考えて行動できてすごいです」など、一生懸命に子どもの姿を見て、素晴らしさを実感している声をたくさん聴きました。

 子どもたちの「やりたい」「知りたい」という気持ちを大切にしながら、教科の学びをどのようにしていくか。子どもたちと一緒に、引き続き「子ども主体の学び」全教室展開に向けた取組を進めていきます。

びんまる2019年6月号より