三好教育長に聞く 福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第26回

挑戦!挑戦!挑戦!

—昨年度は新学期がスタートしたかと思えば、5月末まで一斉休業となり、計画通り進められなかったことが多くあったと思います。今年度もまだまだ感染拡大が心配な状況です。学校行事など、今まで通りに進めていくことは難しい状況ですか?

教育長:昨年度はこれまでの「当たり前」ができなくなった中、各学校は子どもたちとともにさまざまなチャレンジをし、学びを止めない取組を進めてきました。その中で新たな良さを実感している子どもたちや先生たちがたくさんいます。
これからワクチン接種が進み、これまでの「当たり前」ができるようになったとしても、かつてに戻ってよいのかということを、この間、考えてきています。今年度も引き続き感染防止対策を徹底しながら、新たな学校の姿、新たな教室の姿、そこで学ぶ子どもたち・子どもたちとともにある教職員の姿を追求していきたいと思っています。

—新たな姿と言えば今年度、子ども1人につき1台、学習端末が配付されたのですか?

教育長:今年2月から学習端末を全児童生徒・教職員に順次配付してきました。しかし生産が間に合わず、昨年度中に全ての学校へ配付することができなかったため、4月末までかかる予定です。ご迷惑・ご心配をおかけし、申し訳ありません。
これまで授業や家庭での端末の活用に向けて、教職員研修を行ってきました。今年度は「基礎」・「標準」・「発展」とコースを選択して、端末活用について学ぶ研修を年間通して計画しています。子どもたちは勿論ですが、教職員も端末を通してさまざまな情報に触れ、考えることで新たな学びのきっかけにできるものと考えています。
配付が完了した後はできること・できる人から活用していき、子どもたちが端末を文房具のように使うことができるように取り組んでいきます。

—スマホの利用時間を制限しているという保護者の方の声をよく聞きます。これから端末を家庭学習でも使っていくようになると、制限することもどうなのかと迷われる保護者の方もおられるでしょうね。

教育長:スマホに限らず、子どもが家でずっと端末を見ていると保護者の方は気になられると思います。「いつまで見ているの」と注意したとき、「○○を調べている」と返されれば、止めることもためらわれることでしょう。しかしいくら学習で使っているといっても、あまりに長時間になれば、健康面への影響も気になりますよね。
このことに関して新年度に向けた3月末に行った校長会議で、ある月刊誌の記事を紹介しました。

学習場面にICTが入り込んで来れば、例えば家庭で子どもが端末を開いて長時間何かしていても、保護者にとっては遊んでいるのか、学んでいるのか、傍目にはわからないので単純に利用時間制限を守らせるといったやり方は難しくなりますし、子どもにとっても後ろめたさが先に立ってしまうので、安心して学習出来ないかもしれません。こうした状況が日常化すると、子ども自身が適切なメディアバランスを考えざるを得なくなりますし、その時間やバランスは個人の事情によってもそれぞれ違っていて当然ということになります。
このような認識に基づいて、先生や保護者が一方的にルールを押し付けるのではなく、子ども自身が自分で状況把握したり、問題解決をしたりする知恵を学ぶのがデジタル・シティズンシップです。
「先端技術」(2021年4月号) 大特集「オンライン教育」 豊福晋平インタビューから抜粋

「デジタル・シティズンシップ」とは、大人が監視・規制するのではなく、子どもが行動の善悪を自分で考えて判断できる力を身に付けていくという考え方です。
これは発達段階・年齢によって異なることもあると思います。規制・制限することが、すべてだめだということではありません。学校でも家庭でも端末を何にどう使うか、学校・家庭である程度のルールを作ることは必要です。しかしそれから先は自分で考え、主体的に使うということです。大人がずっと監視するわけにはいきません。大人が選び、決めていたこれまでの「当たり前」を見直し、デジタルでも子どもたちが「自ら考え、決めていく」ことが大切だと思います。

—未来を創り生きる子どもたちに向けて、私たち大人の役割はなんでしょうか。

教育長:子どもに限らず人間にはそれぞれ得意(できること)・不得意(できないこと)などの凹凸があると思います。その凹(不得意・できないこと)を埋めることだけに力を入れるのではなく、その子がもつ凸(得意・できること)に目を向け、伸ばしていける環境をつくることが大人の役割だと思います。環境をつくればそれぞれがもっている個性は「勝手に育つ」「育てるのではない」という思いに至るかもしれないですね。

—そのように考える大人が増えていけば、これから子どもと大人の関係も変わっていきそうですね。

教育長:最近教師には「ファシリテーターとしての役割」「ファシリテートする力が必要」ということをよく言われます。日本語に直すと「進行」「引き出す」ということですが、「進行」というと、台本をもって進めるというイメージが強いような気がします。そういう意味だけではなくて、相手の中にあるものを引き出すこと。授業で言えば、子どもの状況を見ながら少し止めて問いを出してみる。その場や内容をどのように深めるのか、広げるのか、つなげるのか。ただ教師が一方的に説明して子どもは聞くという、かつての授業イメージではなくて、「引き出す」「広げる」「つなげる」といった、少し奥深い意味合いが含まれています。
「学びが面白い!」の深化は、どこで何を教えるのか、敢えて教えないということも含め教師のファシリテートなくして実現しません。家庭で親子の会話においても同じように考えてみてほしいと思います。

—改めて大人の役割ってとても大切ですね。

教育長:本当にそう思います。
まだまだ、挑戦!挑戦!挑戦!です。失敗なんてありません。あるとすれば挑戦しない大人たちがその姿を見せ続けることだと思っています。これまでの経験や知識が通用しない、いま現在です。常に難しい、分からない。だからこそ分からないというストレスや不安を挑戦する力に変えて、答えを探し求めていく。挑戦する姿を見せ続けることが我々大人の最大の役割かもしれません。
子どもたちのために、子どもたちとともに挑戦です。

びんまる2021年5月号より