三好教育長に聞く 福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第23回

「学びが面白い!」の深化

—「福山100NEN教育」6年目がスタートしました。今年は、どのようなテーマを掲げられたのですか。

教育長:「『学びが面白い!』の深化」です。「福山100NEN教育」の取組すべてが、「学びが面白い!」へ向かっています。今年は、今までやってきたことの中身を問いながら、より深めていくということで、「深化」としました。

—毎年、どんなロゴが登場するのか、楽しみにしています。今年のロゴは、カラフルな「学びが面白い!」の文字の下に「深化」という言葉。だんだん濃くなっていく色合いからも、「『学びが面白い!』の深化」が表現されていますね。

教育長:ありがとうございます。その通りです。学びの質を求めて、どんどん深くなっていくことを色と形で表現しました。そして、「リアル&デジタル」という言葉を入れました。これから、大きくデジタル化が進んでいきます。このコロナ禍で、デジタルのよさをさまざまに実感していますので、どんどん使っていきたいですね。しかし、デジタルで全てが解決できるわけではありません。リアルとデジタルのバランス、その組み合わせがとても大切です。両方を上手に使っていくことが、「学びが面白い!」の深化に向かっていくと考えています。

—年初めの校長会もオンラインで行われたと聞きました。

教育長:これから、一人に一台、端末を順次配付していく環境にありますので、校長会もオンラインで行いました。今まで、小さい規模でのオンライン会議は何度もやってきていますが、市内全ての学校の校長会議をオンラインで行ったのは今回が初めてです。一度に集まるとなると感染防止対策に気を遣いますし、3学期の始業に向けて限られた時間の中でしたから、今回はオンラインで行ってよかったと思います。お互いにまだ使い慣れていないところはありますが、使うことを躊躇するのではなく、やりながら慣れていき、より効果的な使い方を見つけていきたいと思っています。会議や研修は集まって話すことがいいこともありますし、内容や状況によってはオンラインがいいこともあります。リアルとデジタルの組み合わせ、バランスが大切ですね。

—そういう意味でも「リアル&デジタル」なのですね。オンラインで行われた校長会では、どのようなことを伝えられたのですか。

教育長:「これまでの答えが通用しない時代がやってきています。世界中のみんなが、答えを探しています。難しいこと、わからないことばかりです。今日の答えが明日の答えになるとは限りません。「難しい」から面白い!「わからない」から面白い!『答え』は、いつも【   】にある。【   】というのは、状況によって、どこなのか、何なのか、誰なのか、いつなのか。いろんなことが入ると思います。いろんな「難しい」「わからない」。このことを面白い!と思って、臨機応変に試行錯誤しながら、自分たちの今日の、明日の答えを探し求めていきましょう。子どもたちのために、子どもたちとともに、一緒に頑張りましょう」ということを、まず話しました。
その後、「福山100NEN教育」6年目のスタートにあたり、「子ども主体の学び」の原点に立ち返るため、「認知のしくみから学習方法を見直す」ことを話しました。

—「認知のしくみから学習方法を見直す」とは、どういうことでしょうか。

教育長:認知科学は、人が学んでいくしくみを心と脳のさまざまなレベルで理解しようとする学問です。その認知のしくみについては、3年前から慶應義塾大学の今井むつみ教授から、市内の学校訪問やさまざまな研修の機会を通して、指導いただいています。今回の校長会では、認知科学の常識だと言われていることの中から2つ取り上げて、話をしました。
一つ目は、「『知っている』と『使える』は別」ということです。私の言葉で言うと、「『できる』と『わかる』は違う」ということ。この間、何度も話してきています。答えは出せる。けれども、出てきた答えが何なのかわからない。わかっていないから使えない。例えば、かけ算九九を小学校で何回も言って、覚えている。知っている。しかし、どこでどう使うかわからないから使えない。使っていないから、中学生で九九を忘れている子がいます。『知っている』と『使える』は別」ということです。
二つ目は、「わかりやすく教えれば、教えられた内容が学び手の脳に移植されて定着するという考えは、幻想である」ということ。スモールステップで学習する良さは、あると思います。一問一答。一つの指示で、一つの動作。丁寧にゆっくりと繰り返すことも、大事だと思います。しかし、このことが全てに通用するということにはなりません。先生がわかりやすく教えた内容を、子どもが自分で理解して、使えるというところまでにはなっていないということです。

—確かにそうですね。人からわかりやすく教えてもらって、そのときは「わかった」と思っていても、わかっていないことは多いです。このような認知のしくみを理解して、学習方法を見直していくということなのですね。

教育長:そうです。「『知っている』と『使える』は別」「丁寧に教えれば定着するのではない」ということへの理解なくして、いろんな方法を使っても、方法で止まってしまいます。それどころか、認知のしくみを無視して、子どもに教えやらせ続ければ、子どもの自ら学ぶ力や意欲を失ってしまうことにもなります。

—だから、認知のしくみへの理解を深めていくことが、必要なのですね。

教育長:「福山100NEN教育」6年目は、改めてその「原点」を見つめ直したいと強く思っています。認知のしくみから、子どもの学びに教師がどう関わるのか、関わらないのか。そこを引き続き求めていくことが、「子ども主体の学び〜『学びが面白い!』の深化」につながると思います。
今井教授は、「人は誰もが、自分で学ぶ力を持っている。このことを教えてくれるのは、子どもの母語の学習だ」ということもよく言われています。子どもは、文法や語彙を大人から直接教えてもらって話せるようになっているのではありません。多くの言葉をまだ知らない子どもに、例えば、信号の色を「青」というか「緑」というか、言葉の意味や違いを教えることは、難しいですよね。子どもは、大人が教えなくても、自分で言葉の意味や違いを発見していきます。青色の服、青色の靴、緑色の折り紙…を見たときに、耳から入ってくる「青」「緑」という言葉を聞きながら、どんな色を「青」「緑」というのかを自分で考え、色の境界線も自分でつくっていきます。
子どもが、自分で発見して、学んでいる姿を見ていると、面白くて目が離せなくなります。私たち大人は、子どもたちの自ら学ぶ力を信じ、応援したいですね。

びんまる2021年2月号より