• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第11回

三好教育長に聞く 福山100NEN教育

学びが面白い!〜 もっと  カラフル 〜

—5年目を迎える「福山100NEN教育」の取組が、広報1月号に詳しく紹介してありましたね。

教育長:ありがとうございます。広報誌には、「福山100NEN教育」の取組について、「主体的・対話的で深い学び」、「多様な学びの場の提供」、「学びをつくる教職員研修」「元気・笑顔で学び続ける教職員」という4本の柱で紹介させていただきました。

 取組のすべては、「学びが面白い!」に向かっています。学ぶということは、いわゆる教科を学習するという狭い意味ではなく、生活の中で、遊びの中で、社会の中で、さまざまなことを学ぶということ。教科の学びが、生活・社会の中の学びへとつながっていきます。

 学びの中心には、子どもがいます。面白がって学んでいる子どもたちの姿を描いています。

─教育長のはじめの挨拶の中にも、「中心にあるものは子どもはすごい!という子どもへの尊敬のまなざしです」という言葉がありました。

教育長:「子ども」という言い方もどうなのかなと思うくらい、子どもって本当にすごいと思います。また、「子どもへの尊敬のまなざし」と言うと、子どもに迎合する、子どもに媚びると思われる方もおられるかもしれません。しかし、決してそういうことではなくて、子ども自身、一人の人間として、いろんなことを感じるし、いろんなことを思うし、考えています。それを言葉としてはまだ十分に表せないかもしれないけれど、感じ考えています。そういうことを大事にすることが、我々大人の役割だと思います。そばにいて、手を出すこと、口を出すことも「教える・育てる」ことですが、手を出さないこと、じっと見ていること、邪魔をしないことも大切な「教える・育てる」ことだと考えています。

 実施しているすべての取組は、「教えなければいけない」「やらせなければならない」という考えから脱却し、一人一人違う子どもの学びを促そうとするものであり、そのために多様な学びの場を準備しています。

─「多様な学びの場」の一つとして、以前、学校図書館の整備についてお聞きしましたが、そのときから、さらに図書館の改装が進んでいますね。

教育長:多くの市民の皆様、企業からご寄付をいただいています。ありがとうございます。一斉に全ての学校を改装することはできませんが、1校ずつ着実に整備を進めています。今年度末で14校が完了予定です。2020年度で34校完了予定、そして2023年度には、市内の小中全校で改装完了となるよう計画を立てています。

 先月は、春日小の学校図書館改装に行ってきました。改装にも、地域や県外からもボランティアの方がたくさん来てくださっています。館内の清掃、掲示するパネルを作り、館内を彩る布のミシンかけ、図書の仕分け、書架作りなど、さまざまな作業に協力していただきました。本当にありがとうございます。

 このようにして改装した学校図書館が、多くの子どもたちの学びの場となっていきます。それは、教科の学習で、わからないことを調べる場でもありますし、友だちが開いている本を見て、そこから自分の興味・好きなことが見つかる場でもあります。子どもたちの“もっと知りたい”が広がり、興味を持ったことをさらに探究していく学びの場になることを願っています。

─学校図書館の他にも、多様な学びの場がどんどん広がっていますね。

教育長:そうですね。もうすぐ1年になりますけれど、義務教育学校の1校目として「鞆の浦学園」を昨年4月に開校しました。再編の枠組みの中では、常石小学校で今年4月、1年生から3年生の異年齢集団で学ぶイエナプラン教育を実施します。4年生から6年生は、学習内容や活動により、異年齢集団を活用した教育活動を行っていきます。イエナプラン教育校として開校する2022年4月には、全ての教育活動を異年齢集団で進めていきます。

 国が示し、来年度から小学校で全面実施する新しい学習指導要領が求めている「主体的・対話的で深い学び」の一つの学び方として、イエナプラン教育が全国的にも注目され、さまざまなところで、イエナプラン教育へのアプローチが始まっています。何だか特別なことをするように思われているかもしれませんが、決してそうではありません。「わかるスピードは子どもによってさまざま」「学びは教科・学年を超えていく」といった、子どもの学びを大切にして取り組んできている福山市の教育としっかりとつながっています。

 これまでも、市内の小中高等学校で、「縦割り」という言い方をして、行事や総合的な学習の時間など、日々の教育活動の中で異年齢集団での教育活動をしてきています。また、「学びづくりパイロット校」では、各教科や他学年の内容を関連付け、異学年が一緒に学ぶカリキュラムを編成・実施してきています。パイロット校は現在市内に7校ですが、今年に入り、新たな指定校の募集をしています。常石小学校やパイロット校での子どもの学びを整理し、市内の学校へ発信することを通して、さらに子ども一人一人の学びを大切にした授業が広がっていくものと考えています。

─今年も、たくさんの学校を訪問される予定ですか?

教育長:はい。もともとじっとしていられない性分なので。(笑)やはり、子どもたちや先生たちが、いろんな思いをもって頑張っている、日々生活している現場が、私にとっても現場だと思っています。学校へ行って、その姿をしっかりと見させていただきながら、時には一緒にできることをやらせてもらいたいと思っています。

 先月常石小学校で、久しぶりに授業をさせてもらいました。1年生から3年生までの異年齢グループによる算数の授業です。これが、とっても面白かったです。1年生は「20までの数」2年生は「10000までの数」3年生が「重さ」の学習をしていました。それらの学習がすべて「数」でつながっています。1・2年生は、大きな数を10や100のかたまりで数えていました。3年生が学習している重さも、量りには10や100のかたまりで目盛りが打ってあります。ものさしやビーカーも同様です。「数」が、重さや長さ、量になったりして、表しているものを変えているだけのことです。しかし、この抽象的な「数」の概念が極めて難しいですね〜。算数では、6年間かけて「数」を学んでいきます。

─それは、どんな難しさがあるのですか。

教育長:例えば、同じ「1、2…」という数でも、りんごは「1個、2個…」と数えます。これが長さになると、単位が㎝となります。「1㎝」と「2㎝」の間はつながっていて、無数の「数」があります。数が「1、2…」と数える整数のみだと思い込んでしまうと、小学校二年生以降で学習する「分数、小数…」などの概念が入りづらくなります。

 「数」は、㎝、㎏、dl(デシリットル)、と単位が変わる。また、10、100、10000と桁が変わる。1が最も小さい数だと思っていたら「0」がある。更に、1/2(分数)、0.5(小数)もある…。

 子どもたちは、授業で「長さ」や「重さ」、「小数」や「分数」を学習していきます。しかし、生活の中では当たり前に、自分の体重を15キロとか、身長を110センチと言っています。りんごを半分(1/2)に切ったり、「面積」という言葉を知らなくても4等分(1/4)されたピザのうち大きいものを取ろうとしたりします。家の人と買い物に行ったら、レタスを手に取って重い方を選ぶ、靴のサイズが、20㎝ならきつくて、20.5㎝ならぴったりと感じる、百円玉10枚を千円札に換えてもらう…。こうしたそれぞれの生活経験と学習とが結び付くことで、「数」の概念の理解、「わかる」ということにつながっていきます。

 今年も、たくさんの授業を見て、先生がどう教えているかよりも、子どもたちがどう学んでいるか、何がわからないのか、何を面白いと思ってどんどん学んでいるのか、そういった子どもたちと先生たちの姿を見ていこうと思っています。

─発見されたエピソードは、またどんどん伝えてください。

教育長:もちろんです。子どもたちのすごさと、先生たちが試行錯誤されながら子どもと共に頑張っている姿を今年もたくさん紹介させていただきます。楽しみにしていてください。

びんまる2020年2月号より

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