• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第50回

それぞれの違いを認め合い 切磋琢磨し合う学びの場へ

―2023年度がスタートしました。もうすでにたくさんの学校を訪問されていると思いますが、最近では、感染や感染不安を理由に休んでいるお子さんは、減ってきましたか。

教育長:減りましたね。感染不安で休んでいる中学生は、4月スタートしてから一人もいません。小学校も一日一桁程度の人数です。感染状況も落ち着いてきていますので、登校していない子の人数は、昨年度と比べると随分減っています。

—登校している子が増えているということですね。

 

教育長:そうです。とくに4月の始業日は、1年間で登校する子どもが一番多くなる日です。今年もそうでした。進級・進学して、「新たな気持ちで頑張ろう!」「新しい友だちや先生はどんな人かな?」など、不安な中にも、新たな生活や出逢いを楽しみにする気持ちが、それぞれの中にあるからだと思います。この子どもたちの気持ちを大事にできる学校・教室でありたいと、いつも思っています。
ある学校で、「昨年登校していなかった子が、4月6日に登校してきて、すごくうれしかった。次の日は休んだので、家へ行って話をすると、月曜日は登校してきた。一喜一憂している毎日だけど、この子が登校しようと思っている今を大切にして、できることをやっていきたい。」という先生の思いを聞きました。

—先生方も、子どもたちが元気に登校してくるとうれしいですよね。

教育長:在籍している学校に登校していなくても、様々な場所で学んでいる子どもたちがいます。以前から紹介している福山市フリースクール「かがやき」は、中央(北吉津)・東部(伊勢丘)・西部(松永)の3ヶ所にあり、現在200人以上の小・中学生が通っています。新学期が始まり、各教科の学習を自分のペースで進めながら、休み明けテストに向けて復習している子もいます。
校内フリースクールを設置している学校(小23校、中29校、義務教育学校1校)でも、教科の学習とともに、校内に飾る絵を描いたり、設計図を描いて消毒スタンドを作ったり、興味・関心があることから自分のペースで学んでいます。

―オンラインで教室の授業を受けている子もいるそうですね。

教育長:そうです。一人一台学習端末を持っていますから、教室以外の場所や自宅でも、自分で選択して授業を受けることができます。校内外フリースクールや家庭等、いろんな場所が学びの場となり、学ぶ内容・学び方の幅が広がっています。中には、学校・フリースクール・家での学習を組み合わせて、一週間の計画を自分で立てている子もいます。


各学校は、オンライン等も活用して家庭や関係機関と連携し、一人一人自分に合った場所で、自分で選択しながら学んでいく子どもの姿を共有しています。それぞれの場所で学ぶ子どもの声や姿から、すべての学校・教室が、それぞれの違いを認め合い、切磋琢磨し合う学びの場となるよう、授業を中心としたすべての教育活動を見直しています。

―学びの場と言えば、学校図書館。今年度で、すべての学校の改修が終わりますね。

教育長:今年度20校整備すると、すべての学校の改修が終わります。学校図書館の改修について、この間、いろんな機会を通じて説明してきました。しかし、選書や廃棄に関わることなど、すべての人に十分に説明が届いていない状況があります。図書館は、本を借りる所、静かに机について本を読む所というイメージを強く持たれてる方が多いのではないでしょうか。例えば、子どもが絨毯に寝転がっておしゃべりしながら本を見る姿や、ソファーの上でゴロゴロしながら本を読む姿を見て、どう思われるか。


学校図書館は、子どもがいかに文字に触れるか、本を読むかということを大事にしています。改修後は、子どもの知的好奇心を刺激するよう、文学作品に加え、自然科学や社会科学に関する本を置き、バランスを取りながら配架しています。
例えば図鑑は、写真や絵の情報とともに、文字情報がたくさん入っています。すごい情報量ですけど、その図鑑を2・3人の子が頭を突き合わせながら開いて見ています。このような姿を良しとするかそうでないとするか。図鑑は、家で買うと値段もかかるし、置く場所も取ります。子どもたちが学校図書館へ来て、本を開き読みたくなる環境をめざして、家ではなかなか見られないような本も学校で揃えるようにしています。

―古い本を廃棄されたのも、子どもが本を読みたくなる環境をめざしてのことですよね。

教育長:そうです。すべて廃棄しているのではなく、学級文庫にしたり、みんなが集まる場所へ本コーナーを作って置いたりしています。古い本をずらっと書棚に並べると、数はあっても利用されません。日に焼けた本がぎっしり詰めて並べてあると取り出しにくいし、興味が持てません。子どもが読みたくなるために、本の表紙の面が見えるように配架を工夫しようと思うと、書棚にゆとりが必要です。子どもたちが本を手に取って読むということを一番に考え、その環境を変えていったことは、大きな変化だと思っています。


もちろんこれからも必要に応じて本を購入し、図書の充実を図っていきます。漫画に対するご意見もいただきますけど、漫画も様々なジャンルの漫画があり、そこから得られる知識がたくさんあります。絵で表した動きや表情に沿って言葉が載っていますので、絵とともに多くの言葉に触れ、意味を理解していきます。漢字にはルビがふってあり、難しい漢字でも言葉の意味とともに覚えていきます。漫画は、侮れません。
今年度も、学校図書館が、子どもたちにとって様々な情報に触れる場、興味・関心を広げる場となり、居心地のよい場所となっていくことをめざして、取組を進めていきます。

—最近では、鍵をかけず常時開館している学校が増えているそうですね。

教育長:そうですそうです。5年前は、常時開館実施率が18%でした。今では80%となり、多くの学校が常時開館しています。今までは、子どもが授業中にちょっと図書館へ行って調べてきたいというときに、職員室まで鍵を取りに行っていました。それだけで結構時間をとってしまいます。常時開館していると、子どもたちがいつでも図書館に入れるようになりました。一方で、開けたままにしていて、何か物がなくなったらどうするのかと気にしている人もいます。なくなる前提で鍵をかけるのではなく、なくなった時にどうするかをみんなで考えていっています。このことが、本当の問題解決だと思います。

—保護者・地域の方にも、改修後の学校図書館を利用している子どもの姿を見て、何を大事にしているのかをご理解いただきたいですね。

教育長:すでに学校図書館で保護者会等を開いたりしている学校もあると聞いています。参観日や行事等で、学校へ来られた際は、学校図書館へお立ち寄りください。是非ご覧いただき、声を聴かせていただくことで、子どもたちにとってより良い学校図書館にしていけると思います。

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