• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第49回

自ら、ともに「鍛える」「支える」

 毎年年度末に、「福山学校元気大賞表彰式」が行われています。今回は、第8回目となる表彰式について、三好教育長からお話を伺います。

―「大賞」「優秀賞」「奨励賞」「特別賞」は、どのように選考されたのですか

教育長:今年度は、子ども・教職員・学校が元気であることに加え、日々の授業の中で、「学びが面白い」と感じていることに重きを置いて決定しました。
一次審査では、「学校に行くのが楽しい」「授業の中で新しいことを知ったり、友だちと話し合ったりすることが楽しい」と感じている子どもが多い中学校区を選考しました。二次審査では、「主体性」「学力の定着率や伸び」「心と体力の状況」「教職員のやりがい」など、各中学校区が一緒に取り組んだ教育活動の過程と結果を総合的に判断しました。特別賞は、「学校に行くのが楽しい」「教職員のやりがい・挑戦」「体力」の3つについて、肯定的な回答や得点の伸びが、特に大きかった学校を選考しました。

—今年度の受賞校を教えてください。

教育長:受賞校とともに、各中学校区の代表者挨拶の一部を紹介します。

☆大賞 鳳中学校区(伊勢丘小・幕山小)
「つなぐ・つながる」ことを大切にし、対話の幅を広げてきました。端末を活用して、他校や他県、外国の人と交流したり、交流館で地域の人と対話を重ねたりしています。また、就学前の遊びの中にある学びの芽が小中の学びにつながるようカリキュラムを編成してきました。教職員が日常的に行き来し、子どもの状況を見ながら教材研究を進めていくことで、確かな学力、自己肯定感を育んでいます。

☆優秀賞 芦田中学校区(有磨小・福相小)
学力向上・生徒指導・体力向上保健安全という3つの委員会を組織して、協議を進めています。年3回の合同研修では、道徳の研究授業を行い、小中の課題について考えています。教職員が一丸となって授業づくりを中心とした教育活動を進めることにより、素直な心優しい児童生徒が育っています。有磨・福相小の先生方が、児童に寄り添い、支えてこられた積み重ねが、芦田中の生徒の成長につながっています。

☆奨励賞 新市中央中学校区  (常金丸小・網引小・新市小・戸手小)
キャリア教育の指定を受けて、企業探究学習等に取り組む中で、子どもたちの自己表現力が向上しています。来年度は、最終年度になるので、研究の成果を持続可能なものとし、各中学校区へ広げていきたいと考えています。中学校区でめざしている「チャレンジ&チェンジ」「自己理解力」「自己表現力」を、子どもとともに教師自身も身に付け、豊かなアイディアとチームワークで、来年度も頑張っていきます。

☆特別賞 常石ともに学園
一人一人の「わかる」に向けて、異学年集団での学びに取り組んでいます。子どもの様子を見ながらつまずきを取り上げて対話したり、体験したりする場をつくっています。試行錯誤の毎日で、子どもが自ら学ぼうとしていることを妨げていないかと、自分に問いかけることの連続です。子どもとともに私たちも日々考え抜いています。これからも一人一人の学びに寄り添いながら、「学びが面白い」を追求していきます。

☆特別賞 本郷小学校
本校は、明るく素直な155名の子どもが在籍しています。その一人一人の子どもを大切に受け止め、全教職員が繋がり合いながら、主体的な姿勢で取組を続けています。しんどいこともありますが、どんな時もチーム本郷の団結力で乗り切っています。この一年間の子どもたちの伸びは目を見張るものがありました。保護者の方の支えや挑み続ける教職員の姿があってのものです。今日の喜びを分かち合いながら、明日からの力に変えていきます。

☆特別賞 松永中学校
停滞している学校の現状を打破しようと、「生徒の主体性」をテーマに様々な改革を進めています。講師による実技講習やダンスの全国大会へリモート参加するなど、生徒主体の学びと意欲向上をめざした取組を進め、体力が向上してきています。今年度から西部地区小中一貫教育を立ち上げました。連携協力・切磋琢磨を合言葉に合同研修を行い、地域全体としても主体的な学びが着実に進んでいます。

―これらの言葉を聞くと、子どもたちに力を付けていくために、先生方が中学校区で一丸となり頑張っておられることが伝わってきますね。

教育長:小中一貫の取組が進んでいると実感しています。今年度「全国学力・学習状況調査」の学校質問紙において、8割以上の学校が「近隣の中学校(小学校)と教育課程に関する共通の取組を行った」と回答し、全国よりも25ポイント高くなっています(市82・6%、国56・9%)。先生方が試行錯誤しながら、義務教育9年間の学びをつなぐよう取り組んできたことで、子どもの姿や数値に変化が現れてきています。児童生徒質問紙において「福山100NEN教育」が始ま った年から今年度までを比較すると、「他者と協働して問題を解決する力」に関する項目について、大きな伸びが見られています。(下図)

―この伸びはうれしいですね。授業が変わってきたということですね。

教育長:そうですね。この間、すべての学校の授業を教師が教え込む授業から子どもが自ら考え学ぶ授業に変えていこうと、大きく舵を切り、様々な施策に取り組んできました。
現代は、将来の予測が困難な時代で、その特徴である、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の頭文字をとって、「VUCA(ブーカ)」の時代と言われています。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響、ロシアのウクライナ侵略など、まさに予測困難な時代を象徴する事態が続いています。この変化の激しい時代を生きる力として、「学び続ける力」「他者と協働して問題解決する力」「やり抜く力・粘る力」などが必要です。
2023年度は、さらに「自ら、ともに『鍛える』『支える』」ことを子どもたちも教職員も意識し、日々の授業を中心としたすべての教育活動に取り組んでいこうと考えています。

―それでロゴが新しくなったのですね。

教育長:新しくなったというより、今までのロゴの中心に文字を加えました。2021年度から「福山100NEN教育」のテーマである「リアル&デジタル『学びが面白い!』の深化」を形・色・文字で表現し、ロゴを作りました。2023年度は、その中心に「鍛錬」の「鍛」と、その後ろに「支える」の「支」の字を置きました。「自ら鍛える・ともに鍛える。自ら支える・ともに支える。」「支える」ことが「鍛える」ことを強化する。お互いに切磋琢磨していくという意味も込めています。
この間、各学校では、一斉・画一を求めてきた従来の学校の価値観・体制を問い直し、日々試行錯誤しながら、様々な挑戦をしてきました。その中で、「子どもは主体的に学ぶ」という認識を教職員が深めてきているからこそ、改めて「鍛える」ことの価値がわかり、子どもたちがさらに伸びていくために「支える」ことができると考えています。

―家庭・地域でも「鍛える」「支える」を意識していきたいですね。

教育長:我々大人も、伸びようとする子どもをどう支えられるのか。鍛えられるのか。子どものしんどいことを取り除くことが、大人の役割ではないですよね。子どもの思いを尊重しながら、「鍛える」「支える」というイメージをもって、子どもと向き合っていくことが大切だと思います。  人生100年時代と言われています。今の子どもたちは、22世紀に繋がる命です。子どもはよく希望だ、未来だと言われます。子どもたちが、自分たちでよりよい世界をつくっていけるよう、今年度も全力で応援できる大人でありたいですね。

PAGE TOP