三好教育長に聞く 福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第6回

学校図書館の環境づくり

 福山100NEN教育が目指す「子ども主体の学び」全教室展開の実現に向け、多様な学びの場の一つとして、児童文学評論家 赤木かん子氏監修のもと、学校図書館の環境整備に取り組んでいます。

 赤木先生は、全国の学校図書館の監修を行われており、県内でも、福山市のみならず、三次高校、呉工業高校、熊野高校、三原東高校、廿日市高校、府中東高校、東広島高屋中学、呉市安浦中学などを改装されています。

 今回は、赤木先生と三好教育長との対話をお送りします。

教育長:赤木先生が、本に関わられるようになったきっかけを教えてください。

赤木先生:私は本が好きだったので、本に関係する仕事なら何でもよかったのです。半分遊びで「子どもの時に読んだ本をストーリーからお探ししましょう」という「こどもの本の探偵」を始めて、結局その顛末を書いた本を書いてデビューしました。

 それからは読み聞かせに良い本を紹介したり、書評を書いたりしているうちに、子どもと大人のずれに気がつくようになったのです。

教育長:大人が子どもに読んでほしいと思う本が、子どもにとっては、面白くないことは、よくありますよね。子どもの読みたいという気持ちよりも、大人が読ませたい本を子どもに薦めてしまうこともよくあります。そういったことから、少しずつ本に興味をもたなくなってしまうのはまずいと思います。

 子どもの世界をつぶさに見てこられた先生が選書される本は、思わず手にとって見入ってしまうものばかりです。でも、本を書かれたり本について話をされたりするなかで、どういう流れから図書館をつくられることになったのですか?

赤木先生:10年くらい前に、私が住んでいる学区の小学校から図書館を直してほしいと言われたことが始まりです。最初は、気軽に始めたのですが、一ヶ所直すと、玉突き状態で直さないといけないところが出てきて、最終的には、図書館全部を直すことになりました。そのときに「学校図書館は70年も続いているのだから、どこかに作り方を書いてある本があるだろう」と思って探したのですが、見つかりませんでした。そこから本気で考え初めて、1年半くらいかかり、ようやく学校図書館がつくれるようになりました。

 私が目標にしたのは、非の打ち所のない名作を並べた場所ではなく、その学校に通っている子どものうち、一人にだって「ここには僕が読める本はない」と言わせてはいけないという選書と、誰もが安心して使え、居心地の良い、そして必要な情報は手に入る知的な図書館でした。

 そうした中、後ろを振り向くと、「これは何?」と思う調べ学習の発表の模造紙が貼ってあったのです。出典も何も書いてない、何をやっているのかもよくわからない……。

 そこから、子どもたちに調べ学習の仕方をどう教えるかということも考え始めました。調べ学習をするには、調べ始める前に、調べ方、目次・索引の使い方を説明しなければならないのです。アメリカでは図書館の使い方からレポートの書き方まで教えるのは図書館の担当で、大抵の小学校にはメディア主任のような先生が、調べもののバックアップをしています。大学生も、入学したらまず図書館棟にいって、どういう順序で物事を考え、何をどう使って調べるのかという手順を教わるのです。

赤木かん子先生

教育長:そういう視点から、ずっと図書館をつくられているわけですね。今までにどれくらいの図書館をつくられたのですか。

赤木先生:500ヶ所ぐらいです。小学校、中学校、高校、幼稚園、保育園、それから公共図書館の分館も。それで気がついたのは、小中学校の図書館には、自然科学の本が極端に少ないということでした。

教育長:本市の学校も、全体的に自然科学の本が少ないですね。文学が5割以上で、自然科学や社会科学は1割にも満たない状況です。

赤木先生:先生たちは、教科書に出てくる学習メインでお考えになるので選書が偏ってしまうのです。例えば、教科書に「カエル」が載っていたら、カエルの本は買うけれど、ヘビの本は買わない。でも、司書は、両生類を入れたら爬虫類も必要だろうと考えます。学校図書館は教科書に載っていないところをカバーすることも目的の一つですから。特に最近の小学生は、すごく賢くなっていて、一年生の主な興味は、今や、「ブラックホール」と「元素」ですから。

教育長:「賢くなっている」ということは、とてもよくわかります。生まれたときから、インターネットやスマートフォンがあるわけですから。そういう中で刺激には慣れているし、新しい情報がいっぱいあるわけですよね。

 そういう子どもたちに、一方的に知識を教え込もうとしてもだめでしょう。20年、30年前は、知の最先端、情報の最先端が学校であり、先生であったけれど、今は、自分で思考できる力を育むのですから。

赤木先生:ネットができたおかげで検索できる範囲、レベルが変わりました。今の1年生の中には「今日、傘いる?」と、親ではなくアレクサに聞いて登校する子も出てきました。

 今の子どもたちは、精神的にとても自立していると感じます。ここ何年か、毎年「今年の1年生、すごいよね」という状態が続いていたのですが、この傾向は当分変わらないでしょう。なにせ、ゼロ歳の赤ちゃんから賢くなっているのですから。50年前は確かに小学校図書館の文学は、低学年、中学年、高学年と、きっちり分かれていたものですが、今は1年生から6年生まで同じ本を読んでいる状況です。

 誰も教えてないのに「かいけつゾロリ」や「おしりたんてい」のハードカバーを4歳の子が一人で読むようになりました。今年は1年生に「スマホは、情報は教えてくれるけど考え方は教えてくれない。考え方を教えてくれるのは本だから、ぼくは図書館に来ました」と言われ、驚愕しました。その反面、スマートフォンの普及以降、親が子どもたちに話しかけなくなり、言語を知らない子が多くなってきているとも思います。

 体育の時間に「さあ、みんなくるぶしをつかんで」と先生が言ったら「くるぶしってどこ?」という騒ぎで体育の時間が中断したそうです。その先生が調べたところ、手と足はわかる。でも、ひじ、手首、足首、ひざという言葉が入っていない子が多いことがわかりました。ということは、その単語を一度も聞いたことがない、というわけです。

 でも子どもたちは賢いですし、特に、5・6・7歳は言語習得期なので、面白いと思っただけで覚えられるのです。今や、百科事典の使い方を教える授業も小学校一年生で、できるようになりました。

教育長:学校図書館は、情報収集、学習活動、読書活動の場であると言われています。そういう機能を通しての図書館も当然必要ですが、ページをめくりながら、ふと「え?これ何?」と思って、自分の知らない自分や、これまで知らなかった「好き」を見つけたりする場所にも、したいのです。そういう環境の中であれば、例え字を読むことが嫌いでも、そのページの周辺にある字を読もうとする子が出てくると思います。

 寝転んででもいいし、うつ伏せでもいい。リビングルームのように子どもがくつろいで、本に触れる場所として、市内の学校図書館を整備したいと考えています。
赤木先生、よろしくお願いします。

鞆の浦学園 学校図書館

学校図書館の整備は、市民や企業・団体等からのご寄附を活用させていただき、全ての小中学校の図書館で行う計画です。寄附の申しこみ等につきましては、福山市教育委員会ホームページをご覧ください。皆様の御支援・御協力をよろしくお願いします。
お問い合わせ先/福山市教育委員会  学びづくり課(084-928-1183)

びんまる2019年9月号より