- 三好教育長に聞く福山100NEN教育
三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第32回
三好教育長に聞く 福山100NEN教育
一人一台学習端末
国のGIGAスクール構想のもと、福山市では昨年度末から今年度4月にかけて全公立小中学校の児童生徒と教職員、約4万人へ一人一台のタブレット端末(chromebook)が配付されました。今回は、端末の活用状況について三好教育長からお話を伺います。
—配付から半年が経ちました。子どもたちは学習のどのような場面で端末を活用しているのですか。
教育長:各学校では、創意工夫しながら子どもたちが体験的・対話的に学ぶことと、学習端末をバランスよく組み合わせた授業に取り組んでいます。様々な機能を使った端末の活用例は次
のとおりです。
*オンラインでの授業・公共施設や企 業へインタビュー
*検索サイトを活用した調べ学習
*端末上での意見共有・分類・まとめ
*発表に使用するプレゼンテーション の作成
*デジタル教材を活用したドリル学習
*各教科の学習に係る動画視聴
*簡単なプログラミング
*通信や宿題等の発信・アンケートの
実施 等
4月から学校や家庭において様々な場面で端末活用に取り組んでいましたので、2学期スタートの分散登校では多くの学校でオンラインと対面を組み合わせた授業を行うことができました。
—オンラインと対面を組み合わせた授業というのは、どのようにされていたのですか。
教育長:学校の規模に応じて分散登校の状況は異なりましたので、授業の状況も様々です。ある学校では学級の半数の子は教室で授業を行い、半数の子は端末を通して家で授業を行っていました。社会科の授業では日本地図を見ながら教師の問いかけに対し、教室からも端末上からも子どもたちの発言が聞こえていました。
子どもたちが学校と家とで分かれてはいるけれど同じ授業を行っていますので、教師は教室にいる子に向けて話をしたり、端末に写っている子に向けて話をしたりしていました。
学級を2つに分けて教室と空き教室で分散授業を行っていた学校では、2つの教室を端末でつないで授業を行っていました。体育の授業で子どもたちがバスケットボールの作戦を立て、それぞれの教室で出た意見を端末上で交流していました。子どもたちが作戦を立てている間、教師は2つの教室を行き来しながら子どもたちの様子を見ていました。
分散登校を行っていない低学年の教室でも、子どもたちが端末に慣れていくために授業の中で積極的に活用していました。
ある学校では2年生の生活科の時間に、端末上に意見を出し合って野菜づくりの振り返りをしていました。他にも子どもたちが家に持ち帰って自分で使えるようになるために、様々な機能の使い方を紹介していました。
分散登校を終えた今でも、欠席者や事情により通学して授業を受けることが困難な子どもたちに対して、授業の配信、家庭学習の提示、端末上での対話など個別の支援を行っています。
—学校での活用とともに家庭への持ち帰りも含め、積極的な活用が進んでいますね。そうした中、保護者から使い方について心配する声は届いていませんか。
教育長:子どもたちが学習端末を日常的に活用する姿を見て、視力低下など健康面を気にされている保護者の方は多いです。このことについて、今年4月に文部科学省が作成した「児童生徒の健康への配慮等に関する啓発リーフレット」を学校に配付しています。このリーフレットの児童・生徒用には「タブレットを使うときの5つの約束」が、次のとおり示されています。
*タブレットを見るときは、目から30㎝以 上離すこと
*30分に1回はタブレットの画面から目 を離して、20秒以上遠くを見ること
*寝る1時間前からはデジタル機器の利 用は控えること
*時間を決めて遠くを見たり、目が乾か ないようまばたきをしたりすること
*〇分使ったら1回中断する、学校のタブ レットは学習に関係ないことに使わな いなど学校や家庭のルールを守って使 うこと。
このように、目の健康に配慮した具体的な約束が示されています。各学校はリーフレットも活用しながら、長時間画面を見続けることのないよう授業を工夫したり、子どもたちが自分で画面の明るさや角度を調整できるようにしています。
健康面だけでなく、この間の新聞報道からオンライン上でのいじめ等の問題を気にされている方も多いと思います。9月にはオンラインで臨時校長会を開き、オンライン上でのいじめやトラブルは、どの子にもどの学校にも起こり得るものという認識をもち、子どもの命を守るために「しっかり見る、気付きを声に出す、児童生徒が考え話し合う時間をもつ」ことを各学校にお願いしています。
日頃から端末の利用状況を把握しアンケートをもとにした面談も通して、いじめの早期発見、早期対応に努めていきます。心配なことがありましたら、学校・教育委員会へ連絡してください。
—スマホを使用する子どもの様子を見ていると、大人がすべて管理することは難しいとつくづく感じます。大人は教えていないのに、いつの間に覚えたのかというくらい、あらゆる機能を子どもが使いこなせるようになってい
ますよね。
教育長:子どもたちに一人一台配付している端末は大きさ「304㎜×208㎜×19㎜、1.318㎏」福山市の市章がプリントされた、みんな同じ箱です。しかし、この箱をいったん開けば写真、動画、音楽、プレゼンテーション、メール・・・など、様々なアプリが使え、新しいものを自分で創り出すことができます。世界ともつながり、使い方によってその可能性は無限大、まさにびっくり箱です。興味を持った子は自分でどんどん使いながら、学校で教えられた以上のことを発見し、使えるようになっています。
子どもの活用状況を見ながら心配なことも多いと思いますが、大人がずっと監視するわけにもいきません。以前「デジタル・シティズンシップ」の考え方についてお伝えしましたが、大人が監視・規制するのではなく、子どもが行動の善悪を自分で考えて判断できる力を身に付けていくことが大切です。もちろん子どもたちに任せきりにするのではなく、活用方法について学校や家庭で子どもたちと一緒に話し合う機会をもち、ある程度のルールを作ることは必要です。しかし、それから先は自分で考え、主体的に使うということです。
子どもたちは、今後さらに端末を活用する場が広がっていくと思います。「デジタル」を上手に使うことと合わせて友だちと対話したり、体験したりする「リアル」の場も大切にしながら「リアル」と「デジタル」をバランスよく組み合わせていってほしいと思います。
びんまる2021年11月号より
※最新の情報とは異なる場合があります。
ご了承ください。
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