• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第54回

第20回福山教育フォーラム「福山100NEN教育の今」

 8月2日(水)に、市内教職員をはじめ、保護者や地域関係者など約2200人を対象にした「第20回福山教育フォーラム」が、オンラインで開催されました。

―今年度は、どのような内容だったのですか。

教育長:最初に「福山100NEN教育」の8年間を振り返りました。「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」において、数字の変化を見ながら、この間取り組んできたことについて私が話をしました。その後、次の5つの実践発表を動画で流し、各会場では、学校や授業の在り方について自校・自身と重ねて考え、実践に活かすことを協議しました。


①ともに学び ともに生きる「常石ともに学園」
②叡智学園に学ぶ 本質に迫る教材研究「中学校社会科」 
③事務室からの学校経営参画「学校事務」
④言語習得の過程に沿った英語の授業「5ラウンドシステム」
⑤いつでもどこでも学びの場 かかわる つながる「想青学園」


―この5つが「福山100NEN教育の今」を表しているのですね。どこか紹介していただけますか。

教育長:どの発表も、試行錯誤しながら取り組んできている実践を25分の動画にまとめました。今回は、①「常石ともに学園」②「中学校社会科」の動画から、学びを追求する教職員の姿を取り上げて紹介します。

【 ともに学び ともに生きる 常石ともに学園」 】

校長:「自立」「共生」「自己実現」これが、常石ともに学園のめざす子ども像です。本校では、イエナプラン教育の大きな特徴の一つである、異年齢集団でのグループ編成を行っています。現在1~3年生が3グループ、4~6年生が2グループ、特別支援学級が2グループあり、すべての教育活動を異年齢で行っています。私たちはこれまでも、パイロット校など他校の実践からたくさんのことを学ばせていただきながら、日々教育内容を更新アップデートしてきました。福山市の全小中義務教育学校でめざしている「子ども主体の学び」に向けて、子どもたちと教職員ともに、鍛え合い・支え合いながら、学びの「質」を追求しているところです。

* 数(4~6年生)
教諭A:計算して出た「数」が何を表しているのかを子どもたちに問うこと、それを子どもたちが自分の言葉で説明していく時間が楽しいです。以前は、3学年いっしょに学習するときには領域をそろえて授業するなど、方法ばかりを模索していました。何年か経った今では、算数はどの領域でも「数」にこだわっていくこと、出た「数」を子どもたちに問うていくことを大事にしながら授業をしています。

* 読むこと(1~3年生)
教諭B:すらすら音読できていると、「読めている」と安心してしまいます。しかし、挿絵のない状態で本文を並べ替えようとすると、「え?どういうこと?」となったり、「『じく』って何だろう?」と言葉の意味がわからなかったり…。自分が考えていたところとは違うところで、「わからない」が見えてきます。それを無視すると、子どもたちの「読みたい」という気持ちは枯れてしまいます。教室の中に「わからない」状況が出てくると、一緒に考えることができて、本当の「わかる」に向かっていけます。だから「わからない」という声を大事にしています。

* 探究:常石TV(4~6年生)
教諭C:常石のことをいろんな人に知ってもらうため、環境・交通などのグループに分かれて調査・取材し、情報を整理してTV番組を制作しています。例えば、環境グループは、世界初の水素エンジン船を開発されている常石造船に取材に行き、情報を収集して動画を編集しました。その過程で、「なんで水素が環境にやさしいの?」「そもそも『水素』って何?」と言って、水素記号など中学校の理科の内容に興味をもって調べている子もいました。


【 叡智学園に学ぶ本質に迫る教材研究「中学校社会科」】

中学校社会科では、昨年度から小単元より広い中項目を単元として捉え、生徒が追求する「問い」を設定していくことに取り組んでいる。一斉研修等の授業でも、生徒と教材に向き合いながら中項目を貫く「問い」を考えていく中で…

教諭D:単元を「日本の諸地域」という中項目で考えながらも、「九州」「中四国」と刻んでしまっています。もっと単元の幅を広げていきたいです。

教諭E:本質的な問いを出したつもりでも、違うところに脱線してしまいます。生徒は疑問に思ったことをインターネットで調べても見つけられず、探究が進まない。結局、自分が教えてしまっています。

教諭F:タブレットでちょっと調べて、ネット上に出てきたことをまとめただけのレポートになっていて、教科書の内容を理解できていない生徒がいます。

どうすれば探究に向かう「問い」になるのか。悩みながら取り組む中、今年度「広島叡智学園の社会科ユニットデザイン(※)から学ぶ研修」が始まり、9名の社会科教諭が参加する。 ※概念を用いて単元の探究テーマを設定すること

* 研修を通して考えていること

教諭G:日本の歴史の中で、変化を何かと関係付けることは自分が説明していました。そこを探究課題に入れて、生徒が調べていくようにしようと思います。中項目で単元を計画するには言葉一つをよく考えないといけないし、学習指導要領や教科書なども、もっと読み込んで、単元全体の流れをもっとイメージしようと思います。生徒が調べる、探究になるテーマを一文考えるだけでも、ずっと悶々としています。

教諭H:これまで面白い問い、授業を考えてきたんですけど、子どもたちから簡単な答えしか返ってこないという課題がありました。研修を通して、自分自身が教科書に出てくる言葉の理解が変わったので、生徒たちの気づきも増えてきました。授業を通して概念的な知識を獲得してほしいです。

―先生方が日々試行錯誤しながら授業づくりされていることが伝わってきます。動画でも見てみたいです。

教育長:「子ども主体の学び」を求め、一人一人違う子どもの学びを促そうと、教職員自ら探究しています。この他の発表については、来月の「びんまる」で紹介していきます。

8月下旬から12月末まで、市役所一階ホールのモニターにおいて、5つの動画を配信しています。

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