• 三好教育長に聞く福山100NEN教育

三好教育長に聞く 福山100NEN教育 第53回

「福山100NEN教育」の今

 先月、福山市自治会連合会(町内会長・自治会長等)と福山市による市政懇談会が、3会場(北部市民センター・東部市民センター・リーデンローズ)で行われました。今月はその内容について、三好教育長からお話を伺います。

―教育行政の重点施策について、どんな話をされたのですか。

教育長:「福山100NEN教育」8年目の主な取組について話しました。毎月「びんまる」では「多様な学びの場」「幼保小中連携」「学校元気大賞」など、具体的な取組を紹介しています。今回は、「学校教育の取組」で話した内容の一部を取り上げながら、8年目の取組全体を紹介します。

** 学校教育の取組 **

現代は、コロナウイルスの流行やロシアのウクライナ侵攻など、今までに予測できなかったことが起こる「VUCA(ブーカ)」の時代と言われています。また、チャットGPT等のAI・人口知能の急速な発達により、正確に速く処理したり、覚えたりする仕事は、ますます取って代わっていくと言われています。こうした社会を生きる子どもたちに必要な力は、正確に書く・計算する力のみならず、学ぶ面白さやわかる喜びを実感することで育まれる「学び続ける力」です。

そして、環境・貧困問題など、答えのない課題に対し、様々な価値観を持った人たちと一緒に考え、粘り強く問題解決する力が求められています。こうした力を本市では、「21世紀型“スキル&倫理観”」として育み、福山に愛着と誇りを持ち、変化の激しい社会をたくましく生きる子どもを育てることを「福山100NEN教育」として、4つの柱で取組を進めています。

―「4つの柱」というのは、この表で色分けしている4つのことですか。

教育長:そうです。「『学びが面白い』の深化」に向けて、「主体的・対話的で深い学び」「学びをつくる教職員研修」「多様な学びの場の充実」「元気・笑顔で学び続ける教職員」この4つです。

―順番に取組の具体を紹介していただけますか。

教育長:1つ目は、「主体的・対話的で深い学び」の推進です。子どもたちが自ら考え、友だちや教職員との対話を通して学びを深める授業づくりを進めています。昨年度から授業の質的向上を求めて、6つの分野(幼保小中連携・ICT活用など)において、学びを探究するパイロット校を募集・指定し、取組を進めています。

―どんな分野のパイロット校があるのですか。

教育長:次の表に今年度のパイロット校を示しています。各パイロット校では、子どもと教材への理解を深める教材研究を進め、「子どもたちの学ぶ過程」を大切にしたカリキュラムの開発・実践研究を行っています。取組の過程や成果は、タイムリーに研修やホームページ等で発信しています。
2つ目は、「学びをつくる教職員研修」の充実です。教材研究を中心に据えて、教材そのものの面白さ・難しさを追求していく研修を行っています。市内一斉研修では、研究テーマに基づいて教材研究を行い、授業の実践・検証・改善を通して、授業実践力を高めていきます。今年度は、常石ともに学園・広島叡智学園の実践から学ぶ授業づくり研修を実施し、子どもが自ら探究する教材の研究、伴走者としての教師の役割について、実践研究を行っています。この研修の様子については、8月2日(水)にオンラインで行う「福山教育フォーラム」で紹介する予定です。

―では、来月号の「びんまる」で紹介していただけますね。「多様な学びの場の充実」については、これまで何度も紹介していただいていますが、その後いかかですか。

教育長:校内フリースクールは、2018年設置当初の8校から小学校27校、 中学校28校、義務教育学校1校に広がっています。
校外フリースクールの利用者も年々増加しています。学校では、フリースクールも含め、保健室、校長室等を子どもたちの学ぶ場として活用したり、授業を学習端末で配信したりするなど、児童生徒一人一人の状況に応じた取組を工夫しています。本市の不登校児童生徒数の割合は、全国と同様に増加傾向にありますが、全国より低い状況にあるのは、こうした取組の結果であると考えています。今年度は、特に、学校内外の教育機関等と、どこにも繋がっていない児童生徒をゼロにすることを重点に取り組んでいます。
学校図書館は、子どもたちの知的好奇心を醸成する図書館へと整備が進み、利用する児童生徒、貸出冊数、常時開館校も増えています。整備前の図書館は、文学が蔵書の半分を占め、図鑑や百科事典の情報が古く、常に施錠されて自由に利用できない等の状況がありました。整備後は、子どもたちから、「新しい本、面白い本があり、いつも読みたくなる」という声があります。市民、企業・団体の皆様から多くのご寄付をいただきました。心より感謝申し上げます。

―4つ目は「元気・笑顔で学び続ける教職員」 先生方の働き方はいかがですか。

教育長:これまで、保護者・地域の方々のご理解・ご協力をいただきながら、17時以降の電話制限、部活動指導員の配置など、教職員の業務量削減の取組を進めてきました。その結果、勤務時間を超えて勤務する教職員の割合は大きく減少しており、全国と比較しても、低い状況です。一方、仕事にやりがいを感じている教職員の割合は、ここ数年、60%前後と増加していない状況があります。

―勤務時間・業務量の削減だけでは、先生方のやりがいにはつながりにくいということですね。

教育長:そうですね。昨年度末の教職員アンケートを分析すると、「やりがい」は、「挑戦している・教科が面白い・個性が認められている」等の質問項目と相関関係が強いことがわかりました。学校で一番多くの時間を占める教科の授業において、自分の個性が認められ、子どもたちが「わかった」、「できた」、「学びが面白い」と実感する授業ができることが、教職員のやりがいにつながります。引き続き、業務量削減の取組は継続しながら、研修の充実等を通して、教職員のやりがいの実感につなげていきます。
今回、取組全体を紹介しましたが、4つの柱で整理したすべての取組の中心には、「学び」があります。今年の「福山教育フォーラム」では、「福山100NEN教育」の8年間を振り返り、8年目の「今」を子ども・教職員の姿から具体的に伝えていきます。

―次回に続きますね。楽しみにしています。

PAGE TOP