• ご朱印帳のすゝめ

医王寺

医王寺

鞆の町を見下ろす後山の中腹、バス通りから石畳の小径を上った先に建つ医王寺は、天長3(826)年、弘法大師の開基と伝えられる真言宗の寺院。その眺望の美しさはつとに有名で、福山藩儒の門田朴斎は「医王寺十勝」という漢詩で「夕日の虹は島々に横たわり、水波に落ちる月影はすばらしい。また冬には石鎚山をはじめ、四国連山の積雪が遠望できる」と記している。
その後火災で焼失したものの、福島正則が藩主となった慶長年間に鞆城代大崎玄藩が再興。現存する鐘楼は寛永19(1642)年福山藩主・水野勝成の建立、本堂は貞享2(1685)年四代・水野勝種の再建と伝えられる。
境内からの眺めも素晴らしいが、鐘楼の山側からさらに約15分、583段の石段を上った先にある太子殿からの眺望のすばらしさはまた格別。つづら折りの石段をひたすら頑張って上った人だけが味わえる絶景に、疲れも吹き飛び、心が満たされるのを感じる。文政9(1826)年、オランダ商館長の随行医師だったシーボルトもツツジや松などの観察のためこの小径を上ったというから感慨深い。
県の重要文化財に指定されている本尊は木造薬師如来立像。今春ご開帳され、次は6年後だ。

「流れる雲やそよぐ風、きらきらと輝く海の水面を眺めながら、自然に目を向ける穏やかなひとときを味わってほしい」とご住職。8月19日の夕方には、飢えや渇きに苦しむ死者の霊魂に功徳を施す施餓鬼会(せがきえ)」が催される。

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