木割谷のお月さん

夜空を照らす豊穣への祈り お月さん

No.328

 「月よみの光を清み神島のいそみの浦ゆ船出すわれは」(第15巻3599)
万葉集には月を詠んだ歌が多くあります。満ち潮に合わせて夜に船出し、月明かりを頼りに海を進んでいた昔、無事に航海を終えるためには月の存在は大切なもので、海の干満を起因させる月は信仰の対象でした。
月は豊饒の神として水、雨、植物をも支配していると信じられていました。人々は月の動きを読み取って季節の変化を感じ、農作業の区切りとしていました。また月は永遠に満ち欠けを繰り返す再生・新生の神でもあり、その周期性は暦法に結び付いていました。
本市にも月を祀るいわゆる「お月さん」信仰が残っています。これらのほとんどは市北部の山間部にあり、南部では引野町や新涯町で訪ねることができます。
いずれのお月さんにも自然石あるいは加工石に三日月が彫られ、「月山(がっさん)大菩薩」「月大師」「月神社」「月輪(がちりん)」「月」などの文字が刻まれ祀られてきました。
月を祀る祭礼は昼が一番短く月の力が強まる冬至の日に行われ、カボチャ汁が振る舞われてきました。カボチャは保存が効き、ビタミンCを補給するという古人の知恵で、これを食べると風邪を引かないといわれていました。
山野町木割谷のお月さん(三日月に月の文字)

引野町のお月さん(三日月に月神社の文字)